勉強とはつまらないもの。だから、子どもがつまらなさそうに勉強していても「仕方ない」と諦めていませんか? 日々の遊びの中で何か好きなものが見つかれば、子どもは夢中になって知識や経験を身につけていく。その事実を、子どもたちが証明する──。子どもたちの好奇心を育む教育を実践する「探究学舎」に迫る。【前後編の前編】
受験競争などどこ吹く風と、子どもが夢中になって参加する「学びの場」があることをご存じだろうか。
そこは、“勉強も受験も教えない教室”こと「探究学舎」。対面授業のほか、オンラインでの授業内容も豊富で、海外から参加する子どもも少なくない。
下は小学生から上は高校生まで年齢はバラバラだが、共通するのは、参加している子どもたちがイキイキしていること。しかも挙手や発言をすることに躊躇がない。「聞いているだけ」という、受け身の子どもがいないのだ。
「探究学舎は、いわゆる学習塾ではありません。ですから、成績アップも合格も目指していません」
こうきっぱり話すのは、同舎代表の宝槻泰伸さん(42才)。昨年に続き、今年1月に『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)に出演したこともあり、ご存じのかたもいるだろう。
宝槻さんは進学校を中退し、父親の家庭教育だけで京都大学に進学したという一風変わった経歴を持つ。子どもたちのみならず、保護者からも「やっちゃん」の愛称で呼ばれ、家族のように慕われている。探究学舎は、宝槻さんが父親から受けたユニークな教育からコアとなる部分を取り出し、教育メソッドとして確立したもの。自身の体験をまとめた著書『遊んで見つける学びの革命』は、大きな話題を集めている。
いったい、探究学舎とはどんな教室なのか。
「宇宙、生命、元素、医療、数学、経済、歴史、芸術、ITなど、さまざまな分野の驚きや感動を通して“もっと知りたい”“やってみたい”という興味や探究心、好奇心を育てることを目的にしています」(宝槻さん)
実際に子どもが通う母親に話を聞いてみた。都内在住のMさん(49才)は、3人の子どもの母親。
「友人から“面白い教室がある”と聞いてはいましたが、最初は塾的なところに通わせることに抵抗がありました」(Mさん・以下同)
だが、2020年3月、状況が一変する。
「新型コロナで学校が一斉休校になったとき、わが家は上の娘が小学6年生、真ん中の息子が3年生、下の娘が小学校に上がるタイミング。ほかの家庭と同じく、〝時間を持て余した子どもたちをどうするか〟に頭を悩ませていました」
そんな折、コロナ禍に探究学舎は元気をなくした子どもたちに向け、オンライン授業を開始する。
「無料だし、家でダラダラするよりはと軽い気持ちで申し込みました」
ところが、子どもたちの変化は劇的だった。
「オンライン授業を受けたのですが、3人とも、ものすごく楽しんでいることが、こちらにも伝わってきました。
それまで学校の授業で教わったことを食卓で話したことなんて全然なかったのに、探究学舎については、どんな授業で何が楽しかったかをうれしそうに話してくれたんです」
授業を受けさせることに懐疑的だったMさんの夫も、子どもたちの目に見える変化に、考え方を変えた。