さまざまな分野の驚きや感動を通して“もっと知りたい”“やってみたい”という興味や探究心、好奇心を育てることを目的としているのが、「探究学舎」だ。“勉強も受験も教えない教室”として、対面授業のほか、オンラインでの授業内容も豊富で、海外から参加する子どもも少なくないという。同舎の代表は、進学校を中退し、父親の家庭教育だけで京都大学に進学したという経歴を持つ宝槻泰伸さん(42才)。「探究学舎」では、いったいどんな教育が行われているのか──。【前後編の後編。前編から読む】
2人の息子を持つ母親のSさん(50才)は、次男を探究学舎で学ばせていた。
「小学3年生の夏休みに、宇宙の授業を体験したのが最初です。そうしたらすぐに夢中になってしまって。“まるでライブコンサートのような授業だな”と思ったのを覚えています」(Sさん・以下同)
Sさんが探究学舎を知ったのは、本誌『女性セブン』がきっかけだった。
当時、長男・宝槻泰伸さんら3兄弟が父親から受けた破天荒な教育法が漫画で連載されていた(宝槻泰伸著、小出真朱まんが『遊んで見つける学びの革命』収録)。
「宝槻さんの父親は、街で見かけた見ず知らずの人を“面白い!”と家に連れてきたり、子どもが何かに没頭しているときは学校に行けとも言わず一緒に映画を見たり紙飛行機を飛ばしたり、やっていることは規格外なのですが、父親が子育てを楽しんでいるし、子どもたちも楽しく学んでいる。“こういう家庭教育もあるんだ!”と、読んでいて気持ちがラクになりました」
Sさんが、遊びや楽しさに特化した「宝槻家の教育」に惹かれたきっかけは、長男の子育てに対する悔いが残っていたから。
「初めての子だったこともあり、あれもこれもと、長男に詰め込んでしまっていた」とSさんは振り返る。学習塾にサッカー、ダンスと、「子どものプラスになるなら」と、分刻みで習い事をさせていたのだ。
「子どもって、母親のことが好きだから“ママが喜ぶなら”と無理してしまう。息子のがんばっている姿を見て、こっちは歯止めが利かなくなってしまって」
あるとき、サッカークラブで事件が起きる。Sさんの長男は友達からいじめにあい始めたのだ。解決すべく親も奔走したが、事態は改善せず、長男はついに体調を崩し、学校に行けなくなってしまった。
このクラブは全国大会の常連で、辞めようとすると「おまえのせいで全国大会に行けなくなったらどう責任をとるのか」と監督にまで責め立てられた。
「中学受験の塾にも通えなくなってしまって。いま思えば、サッカークラブは辞めればよかったし、無理に学校に行かせる必要もなかった。でも“がんばれ”と背中を押し続けてしまった」
その後、進学した高校の水が合い、長男は笑顔を取り戻すことができた。
だがあのとき、もっとほかのやり方があったのではないかと、Sさんは心に引っかかっていた。
「子育ての難しさを実感していたときに、連載漫画と出合い、探究学舎にたどりつきました。こんなに楽しそうな少年時代を過ごしてきた人がやっている塾って、どんなところだろう、という好奇心がわいたんです」