芸能

【秘話発掘】八代亜紀さん、15歳の原点 初舞台となったキャバレーの大ママが振り返る“歌姫誕生”の瞬間

「キャバレーニュー白馬」創業者の故・西田勝己氏(右)とその妻である“大ママ”フサエさん(左)の間で記念撮影に応じる若き日の八代亜紀さん。西田氏は歌をこよなく愛する人物だったという

「キャバレーニュー白馬」創業者の故・西田勝己氏(右)とその妻である“大ママ”フサエさん(左)の間で記念撮影に応じる若き日の八代亜紀さん。西田氏は歌をこよなく愛する人物だったという(写真提供/池田義信氏)

 1966年、熊本のキャバレーで一人の少女がステージに立った。“昭和の歌姫”八代亜紀さんが誕生した瞬間の目撃者が「あの日」を語る──。

 * * *
 八代亜紀が初めて立ったステージは、八代市の老舗キャバレーだった。

「引っ込み思案の亜紀ちゃんは、度胸試しのつもりでうちのオーディションを受けたそうです」

「キャバレーニュー白馬」創業者の妻で、今も大ママとして時おり店に顔を出す西田フサエさん(97)は、当時を懐かしそうに振り返った。

 厳格な父に隠れ、ひそかに歌手を夢見た15歳の八代は、中学卒業後にバスガイドとして働き始めた。人前で話したり歌うことの苦手意識が克服できずにいたが、意を決し、友人に紹介された「キャバレー白馬」(当時)のオーディションに年齢を18歳と偽り応募した。

「生バンドを従えてジャズナンバーを歌唱した姿は、初舞台とは思えない堂々としたもの。無関心だったお客様が徐々に彼女の歌声に心を奪われ、やがて大勢がダンスフロアで踊り始めたのには驚きました」(フサエさん)

 こうして翌日には15歳の専属歌手が誕生する。連日、万雷の拍手とアンコールの声が絶えなかったという。まもなく百寿を迎えようとする大ママの脳裏に、その光景はしっかり焼き付いている。

 ところが、わずか3日で父に発覚。激怒する父に歌手の夢を猛反対された八代は、それからまもなくとなる1966年8月29日、16歳の誕生日に家出同然で上京した。

 現在、「キャバレーニュー白馬」の代表を務める池田義信氏は、八代と同じ中学の後輩にあたる。1つ年下で、在学中は部活動で顔を合わせる程度。会話を交わすことはなかったという。

「私が30歳の頃、亜紀ちゃんが店に来て。大人になって初めてお会いしたので『いらっしゃい、先輩』と言うと、『先輩だなんて、やめて~』とチャーミングに返し、ハグしてくれました。誰にも分け隔てなく天真爛漫で、いつもその場を明るくする人でした」(池田氏)

 大スターとなっても、帰郷する度に同店に挨拶に訪れる八代の郷土愛に、池田氏は感嘆している。

「公演の度に『キャバレーニュー白馬』の話をしてくれたそうです。『どうして?』と聞くと『ここが私の原点だからよ』。こんなスターはいない。八代市や熊本県のPRはもちろん、天災が起きると何があっても駆けつけてくれた。私たちにとって彼女は宝であり、身内のような存在です」(池田氏)

 地元を愛し、地元に愛された八代の歌声は、これからも人々の胸を打ち、心を躍らせるだろう。

取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2024年2月23日号

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン