災害関連死の原因のひとつとしてエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)がある。脱水と長時間脚を動かさないことで血栓が生じ、その血栓が肺に飛び、塞栓症を起こす。この病気は脱水、高齢、肥満、ホルモン剤、先天的に血栓ができやすいなどの要因が重なり発症する。特に、がんは血栓を生じやすく、注意が必要だ。治療は抗凝固薬の服用で、新しい薬剤も開発された。
エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)とは脚に血栓が生じ、腫れて痛みがあったり、その血栓が心臓を通り、肺動脈に詰まって急性肺塞栓症を起こす病気で、最悪の場合は死に至る。
災害時はトイレを我慢しようと水を控えたりするが、脱水になりやすい。また車中で過ごすケースもあり、必要以上に長時間脚を動かさなくなる。その結果、発症リスクが高まってしまう。避難所では早期発見に備え、超音波検査機器で脚の血栓の有無を確認している所もあるそうだ。
東邦大学医療センター大橋病院循環器内科、肺塞栓外来の池田長生医師に聞く。
「静脈血栓塞栓症はバックグラウンドに様々な疾患が潜んでいて、特に多いのが悪性腫瘍(がん)。この病気の約3割の方に、がんが発見されており、気をつけたいところです。近年は血液をサラサラにする新しい抗凝固剤が開発され、比較的治療は容易になりました。その一方で、隠れているがんの見逃しや再発症例も多く、それらのフォローが必要と考え、2020年に肺塞栓の専門外来を開設しました」
静脈血栓塞栓症の原因としては、がん、脱水以外に高齢、肥満、ホルモン剤(ピルなど)やステロイド剤の服用、先天的に血栓ができやすいなど様々な要因があり、それらが複合的に重なって発症する。
ただし、この肺塞栓症の主な症状は息苦しさだが、中には全く症状がなく、別の病気のCT撮影で偶然に発見される例もある。他にも脚が腫れて痛みがあり受診した結果、息苦しさはないのに、肺に血栓が詰まっているのが発見されたケースもあったりする。