2024年4月から、タクシー会社による運行管理の下、「有償ライドシェア」が部分的に解禁される──政府がこの方針を打ち出したのは、昨年12月下旬のこと。タクシーが不足している地域や時間帯を限定した上で有償ライドシェアを認めるという方向性で、岸田文雄首相が表明した。
ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車で利用者を運ぶ行為を指す、いわば「相乗り」のことだ。国内ではこれまで道路運送法により有償のライドシェア、通称「白タク行為」は禁止されてきた。
しかし近年では、タクシー不足を背景として、都市部や観光地を抱える自治体を中心に解禁を求める声が続出。政府でも導入の議論は進み、昨年夏に菅義偉前首相が言及したことを皮切りに、解禁に向けた議論が本格化した。
「総合病院まで70km」の過疎地域ではすでに導入
有償ライドシェア解禁の是非については、乗客とのトラブルに対する懸念などもあり、反対の声もある。また全面的な解禁となると、タクシー業界からの反発は免れず、政府は納得のいく合意形成を図らなければいけない。一方で公共交通機関が十分に機能していない過疎地域では、有償ライドシェアの導入を急ぐところもある。
有償ライドシェアの着地点は来年まで持ち越しだが、実は無償ライドシェアとなるとすでに自治体レベルで導入している事例がある。北海道北部に位置する天塩(てしお)町だ。
人口2742人(2023年11月末)の天塩町では、近年人口流出が止まらず、少子高齢化が深刻化している。そこで自治体は2007年から運営されている相乗りマッチングサービス「notteco」を活用し、天塩町から稚内市をつなぐライドシェアの実証実験(2017年に同サービスと提携)を行なっている。
多くの住民が生活圏とするのは、北に70kmほど離れた稚内市。総合病院への通院や買い物などの用事を済ませる場合、天塩町内よりも稚内市のほうが利便性は高く、車で1時間ほどかけて移動する住人も少なくない。
だが車を所有、運転できない高齢者となると、移動は困難を極める。バス・鉄道を介す手段もあるものの、片道3時間ほどもかかり、日帰りでの往復は不可能に近い。自治体は町内に大量の交通弱者があふれることを危惧し、移動交通手段のひとつとしてライドシェア導入に踏み切ったというワケだ。