インターネットに公開された情報は、一度、SNSなどで拡散されるとなかなか消すことが出来ずデジタルタトゥーとなることが社会問題となりつつある。そんななか、官庁が公表する不正受給者リストが半ばデジタルタトゥー化しており、公表された個人の人生が大きく変えられてしまった例もある。ライターの宮添優氏が、軽い気持ちで持続化給付金の詐取を実行したことによって、いまもコロナ禍の重苦しい生活が続いている人たちの後悔と苦悩についてレポートする。
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街行く人の多くが今もまだマスク姿ながら、ほとんどの国民が「コロナ禍」は終わったもの、もしくは終わりかけているものと感じているだろう。行けなかった旅行や友人知人との外食など、コロナ禍で我慢したことを一気に楽しもう、そう考えている人も少なくないはずだ。
一方、コロナ禍で負った”ダメージ”の清算に追われる人たちは、何を考えて過ごしているのだろうか。
「正直、あれで人生を棒に振ったという感じです。本当に馬鹿だったし、3年前の自分を殴りたい。今はどうすることもできませんが」
視線を落とし、寂しげにこう話すのは中部地方在住のフリーター・籠島諒平さん(仮名・23歳)。実は籠島さん、経済産業省が逐次発表している、コロナ禍における持続化給付金などの「不正受給者」のリストに名前が載り、世の中に広く公表されてしまった1人。きっかけは当時、専門学校生だった籠島さんが、地元の先輩である飲食店経営者に「名義だけ貸して」と言われたことだった。
「その時は単なる学生だったんですが、個人事業主とかフリーのライターってことにすれば100万円がもらえると聞いたんです。最初は悪いことではないのか、と頭をよぎりましたが、コロナで緊急事態だしみんなも生活が苦しいから同じようなことをやっているとか、国も見逃してくれるとも先輩は言っていて、それならと思いお願いしたんです」(籠島さん)
就職を諦め、学校もそのまま辞めました
コロナ禍により、前年同月比で売り上げが50%以上落ちた中小企業や個人事業主を救済するべく設けられたのが、この持続化給付金制度だ。他にも、家賃支援給付金や事業復活支援金など、様々な支援策が講じられた一方で、不正受給が次々発覚し、受給額の多い法人の代表者などの逮捕も相次いだ。