結成52年のベテラン漫才コンビ「ザ・ぼんち」。71歳の2人は、1980年代の漫才ブームを牽引した芸人でありながら、今年、30~40代の後輩が主戦場とする漫才賞レース『THE SECOND』(フジテレビ系)に参戦する。挑戦の理由を、ノンフィクションライターの中村計氏が訊いた。【前後編の前編。後編を読む】
「負けるつもりはない」
本気だった。ザ・ぼんちのツッコミ役、里見まさとの言葉の端々から闘志があふれ出ていた。
「勝負ですから。相手がいる以上、負けたくない。負けたくないけど、自分たちの漫才をやって、負けたんだったらしゃあないし。そうは言っても、負けて悔しくないということはないと思います」
後輩たちの邪魔をすべきでないという大人の意見も耳にした。それも重々承知の上だ。まさとが続ける。
「十分、プレッシャーを感じております。何も後輩たちに『どけーっ!』いうようなことをするつもりはないんですよ。ただ、出る以上、負けるつもりはありません」
今年で第2回を迎えるTHE SECONDの応募が締め切られたのは1月10日のこと(決勝は5月末)。結成16年以上の「まだ売れていない」組をメイン出場者に想定する異色の漫才コンテストだ。
出場者が発表され、もっとも周囲を驚かせたのは結成52年の「大物」コンビ、ザ・ぼんちの名前だった。ともに今年、72歳を迎える。年男だ。まさとがエントリーに至った背景を振り返る。
「去年あたりから、ありがたいことに若手中心の劇場にも出させてもらいまして。THE SECONDを目指しているコンビは意気込みが違う。1回目と2回目の出番でネタを変えたり、新しいフレーズを入れてみたり。ええなあ、この空気と思って。自分たちも、この『画』の中に飛び込んでみたいなと思った。口の中をカラカラにさせながら、また漫才をやりたいな、と」