テレビ朝日系で放送中のスーパー戦隊シリーズ『王様戦隊キングオージャー』が2024年2月25日の放送で最終回となる。戦隊メンバー全員が王国の「王様」で、仲間同士でも本心を明かさない政治劇の側面を持った作品だ。
48年の歴史ある同シリーズの中でそれまで当たり前にあった巨大ロボの戦闘がない回や、5人中1人しか変身しない回があるなど、スーパー戦隊シリーズのフォーマットを振りにした革新的な展開が性別年代を問わず多くの視聴者の心を掴んだ。脚本を担当した高野水登さんに“掟破り”と評される本作を執筆した過程を訊いた。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第10回【前後編の前編。文中一部敬称略】。
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『真犯人フラグ』脚本執筆後に来たオファー
「ネット流行語大賞2023」で【推しの子】関係の言葉が上位に並ぶ中、3位にランクインしたのが『王様戦隊キングオージャー』(テレビ朝日系)だ。そのタイトル通り、メンバー全員が「王様」という異色のスーパー戦隊は、その複雑で深遠な人間ドラマで、特撮ファンのみならず、ドラマファンも巻き込み大きな反響を生んでいる。
脚本を担当したのは30歳の新鋭・高野水登。「あまり戦隊モノは通ってこなかった」と公言しているが、『仮面ライダーゼロワン』を2話分担当した縁もあり、同じ大森敬仁プロデューサーが手掛ける『キングオージャー』のほぼ全話を執筆するメインライターに抜擢された。
「お話をいただいたとき、ちょうど『真犯人フラグ』(日本テレビ系)の脚本の執筆が終わって、最終回の放送を待つくらいの頃だったんです。2クールのオリジナルドラマを書かせてもらえるのはすごく恵まれていることだし、個人的には相当好きに書かせてもらった作品だったんですよ。だから、やりきった感じもあって虚脱状態で、次に何をやればいいんだろうっていう気持ちになっちゃっていたんです。
そんな時に大森プロデューサーから『キングオージャー』の話をもらって、びっくりしましたけど、本当に嬉しかったですね。戦隊はあまり通っていなかったと言いつつ、父親が『仮面ライダークウガ』や『仮面ライダー555』が好きでそれを見ていたり、『ウルトラマン』の図鑑も家にあったし、『ゴジラ』シリーズも大好きだったんです。しかも『仮面ライダーゼロワン』でかつてお世話になった大森さんとなら大丈夫だろうという気持ちで、僕としてはもう願ったり叶ったりという感じで是非やらせてくださいと」
大森からは「王様で戦隊です、全員最強です」と設定を伝えられ、高野は絶対に面白いと確信した。「スーパー戦隊」シリーズは、大河ドラマ同様、1年間にわたり放送されるもっとも長い連続ドラマ枠のひとつだ。
第1部では6人の王様(自称含む)と地帝国バグナラクとの戦いを軸にしながら、シュゴッダム国で「邪悪の王」を自称する主人公ギラ(酒井大成)と、国民を犠牲にしてでも利用することも厭わない暴君である兄・ラクレス(矢野聖人)との対立の物語が並行して進んでいた。
物語の中盤、ギラはラクレスを破り正式にシュゴッダム国の王座に就き、遂にバグナラクの王・デズナラク8世も打ち破る。しかし、第2部ではダグデド率いる「宇蟲五道化(うちゅうごどうけ)」との戦いに突入すると、シュゴ仮面としてラクレスが“復活”し、再びギラたちの前に立ちはだかり、重層的な物語が展開していく。全50話を2部制に分ける構成は執筆当初の段階で決めていたという。
「最初に敵対する地帝国バグナラクが本当の敵ではなく、2部で宇蟲王が出てくる流れは最初に決めていました。あと、中盤のキョウリュウジャー編で明かされる、物語の舞台であるチキューの先祖が、実は地球からの移民だったという設定もこの時点で考えていました。
最初にある程度、スーパー戦隊を勉強して、毎年、別の戦隊とのコラボがあるらしいっていうのを知った時に、『キングオージャー』はゴリゴリのファンタジー世界の話だから、出せるギミックを今のうちに考えておかないといけないなと思って」