芸能

「子供向けだからこそ、綺麗事が本気で言える」『王様戦隊キングオージャー』脚本・高野水登が考える特撮作品のメッセージ性【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】

『王様戦隊キングオージャー』は2024年2月25日の放送で最終回を迎える(c)テレビ朝日・東映AG・東映

『王様戦隊キングオージャー』は2024年2月25日の放送で最終回を迎える(c)テレビ朝日・東映AG・東映

 テレビ朝日系で放送中の「スーパー戦隊」シリーズ『王様戦隊キングオージャー』が2024年2月25日の放送で最終回となる。戦隊メンバー全員が王国の「王様」で、仲間同士でも本心を明かさない政治劇の側面を持った作品だ。

 脚本を担当した高野水登さんに、性別や年齢を問わず幅広い視聴者に届けるために考えていたことを訊いた。

 聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第10回【前後編の後編。前編からつづく。文中一部敬称略】。

 * * *

中村獅童がテレビ版の出演も熱望

 放送されるたびに毎回番組に関連したワードがSNSのトレンドに入る『王様戦隊キングオージャー』。第1部の佳境にあたる7月末に公開された映画『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』はわずか30分強という長さにもかかわらず、その濃密な物語とクオリティで絶賛された。

「スーパー戦隊」シリーズの映画版は別の脚本家が手掛けることが少なくないが、『キングオージャー』の場合は、本編同様、高野水登が執筆した。ゲストとして中村獅童や雛形あきこ、佐倉綾音らが出演。特に「スーパー戦隊」名物である名乗りを上げる演出は歌舞伎の演目「白浪五人男」が元ネタとあって、歌舞伎界から中村獅童が“始まりの王”であるシュゴッダム初代国王・ライニオールを演じたのは大きな意味があった。

「最高でしたね! 中村獅童さんのおかげで、作品としての重みが出たと思います。衣装の打ち合わせのときもご自身からアイデアを出してくださって。あの豪華な衣装、見るからにでっかくて重いんですよ。だから重い衣装をスタッフが気遣ってたんですが『いや、いつももっと重いの着ているから』って。『おお、カッコいい! 格が違う」と思いましたね。

 やっぱり僕も元が歌舞伎だと知って、なぜ名乗るのか、みたいなところも『キングオージャー』では入れたつもりで。その元ネタの世界から来てくださって。しかも、決して大仰な芝居は全くされずに、小さな所作ひとつで威厳が出る。ただただ圧倒されて、中村さんに話しかけられなかったのだけが本当に心残りです(笑)」

 中村獅童は自ら「テレビ版もどうなんですか監督!」と公開初日の舞台挨拶で言っていたように、今度はテレビ本編にも出演。『キングオージャー』には出るものを前のめりにする魅力があるに違いない。佐倉綾音や雛形あきこも含め映画版ゲストが本編にも総出演する異例の展開を見せた。「宇蟲五道化(うちゅうごどうけ)」のひとり、グローディ役には天野浩成が起用され、雛形と天野の夫婦共演を果たしたことも話題に。天野は、雛形の『キングオージャー』出演に誰よりも喜び、熱烈にSNSで発信していた。

「あれはもうやらなきゃダメだろって(笑)。大森さんが『グローディ役、天野さんはどうですか?』って言われて、『それしかない!』って。あんなにSNSで応援してくださったので、決まったときは嬉しかったですね。あの2人のセリフが書けたのは本当に良かったですね。『ただの夫婦の会話じゃねえか』って言われたら本望だなと思いながら書きました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン