夫婦関係を嘆く声は枚挙に暇がないが、不和の原因について理解が正確でないパターンも多そうだ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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世の夫のみなさんは重々ご承知のとおり、妻には押すと困った事態を招く「スイッチ」が大量に潜んでいます。「夫にだってあるぞ!」と言いたいかもしれませんけど、張り合っても仕方ありません。まず自分にできるのは、なるべく「押してはいけない 妻のスイッチ」を押さないように気を付けること。それが、末永い夫婦円満への第一歩になります。
家事、食卓、買い物、実家&義実家、旅行先など、スイッチの密集地帯はあちこちにあります。「おじさん世代」がとくに気を付けたいのが、ジェンダーや容姿や年齢に関連するスイッチ。「昭和なジェンダー意識」が、無意識のうちに「妻のスイッチ」を押して、大惨事を招いてしまうケースは後を絶ちません。
自分では「オレは十分に今の常識についていけている」と思ってしまいがちなのが、ジェンダー意識の怖いところです。しかも、ここで幻滅されると、人間性まで否定されかねません。妻に愛想を尽かされないために、昭和の感覚を引きずっているおじさん世代の夫が、不用意に口にした言葉で押しがちな5つのスイッチを検証してみましょう。
●スイッチその1
シチュエーション:落ち込んでいたら妻に「どうしたの?」と聞かれた
「女にはわからないよ」
心配して声をかけてくれた妻のやさしさには感謝していますが、こう聞かれても「じつは……」と話す気になれないのが、昭和世代のプライドであり意地。妻に心配をかけたくないという思いもあります。しかし、この返しはあまりに無謀。妻としては、差し伸べた手を振り払われたことが、まず不愉快です。しかも、無意識に女性を見下していたり、男性である自分を過大評価していたりしている本性が垣間見えて、深く幻滅するでしょう。
●スイッチその2
シチュエーション:体調が悪くて仕事を辞め、今は専業主婦をしている妻に
「いいなあ、俺も主婦になりたいなあ」
表面的にはうらやましがっている言葉ですが、ぜんぜん仰ぎ見てはいません。それどころか「ラクしやがって」という失礼な気持ちが漏れ出ています。望んで専業主婦をしていたとしても、まったく感謝していないことが丸わかりになって、妻は激しく傷つくでしょう。まして仕方なく仕事を辞めた妻にこれを言ったら、取り返しがつきません。妻が「じゃあ、交代しようか」と言えないのを見越して言っているところも、かなり残念です。
●スイッチその3
シチュエーション:洋服を選びながら「どっちが似合う?」と妻に聞かれた
「どんな服を着ても、たいして変わらないよ」
忌憚のない意見を言えば、そのとおりかもしれません。「これを言ったらマズイ」とわかってはいても、買い物に延々付き合わされて疲れているときに聞かれると、つい口が滑ってしまいそうです。長年連れ添った妻への甘えがあったり、ウケ狙いだったりという一面もあるかもしれません。自分なりに「三分の理」があったとしても、こう言われた妻は自分の全存在を否定された気になって、その怒りの炎はしばらくは鎮火しないでしょう。