村上一枝さんはこれまで約30年にわたり、カラ西アフリカ農村自立協力会を率い、西アフリカのマリ共和国の農村で主に女性たちへの支援活動を続けてきた。小児歯科医を辞して、48歳からのゼロからのスタートだった。現在、83歳。「考えるより行動!」──そんな人生を、マリ出身で京都在住30年以上、日本初のアフリカ人学長を京都精華大学で務め、現在、日本国際博覧会協会副会長を担うウスビ・サコさんと共に語った。
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カバ共和国ワニ川市出身ってどこ?
2023年師走、恒例のカラ西アフリカ農村自立協力会のチャリティコンサートが都内で行われた。カラの活動を支援する目的で毎年開催されるこのイベントに、今回、マリ共和国出身のサコさんが登場。西アフリカに位置するマリ共和国のこと、そしてカラの支援活動について村上さんと語り合った。まず、マリ共和国とは、名前は聞いたことがあるかもしれないが、いったいどんな国なのだろうか。
「マリというのは、動物の『カバ』を意味します。首都のバマコは『ワニがいる川』という意味です。つまり、私はカバ共和国ワニ川市出身です」。軽快な関西弁でサコさんは会場に語り掛けた。関西のノリとはちょっと異なる反応に苦笑いだ。
マリ共和国は、アフリカ大陸の西側にあり、1960年にフランスから独立。国土は日本の約3倍で、その約3分の2はサハラ砂漠が広がり、あとはサバンナ(熱帯草原)に属している。人口は、2259万人(2022年現在)だ。世界最貧国の一つともされる。
「サコさんと初めてあったのは忘れもしない1995年の1月1日。私は日本に一時帰国していたのですが、なんの予告もなしに、東京のカラの事務所に日本人の友人3人と突然やってきたのです」。村上さんはサコさんとの出会いを振り返る。すでに、マリの農村での支援活動を意欲的に進めていた村上さんに、サコさんは親近感を抱いていたのだろう。
というのもマリでは、自分の家に知らない人が住んでいたり、同郷の知り合いの知り合いがいきなり訪ねてきたりするのは、日常茶飯事らしい。「バマコのわが家には、お父さんの田舎の隣の家の知人といった人が20~30人ぐらい住んでいたし、1年間住みついている人もいました」とサコさんはさらりと言う。そして誰もが、赤の他人なのに「勉強のことだとか、生き方について、とやかく言ってくる」。ちょっと一昔前の日本の長屋の風景に似ているようだ。
そんなマリのエピソードに加えて、村上さんは「マリでは挨拶もすごく長いんです。こんにちは、だけでは終わりません」と語る。「元気ですか?」「昨夜はよく眠れました?」「家族のみなさんは元気ですか?」「近所のみなさんは元気ですか?」…と続く。しかも5人いれば、すべての人に同じように挨拶するというのだ。サコさん曰く「挨拶は共存社会の基本」らしい。