「今回は大谷翔平に助けられた」──自民党内でそう見られているのが岸田文雄・首相だ。「前例にとらわれないとの私の決断だ」と語って、現職総理としては初めて国会の政治倫理審査会(政倫審、2月29日)に自ら出席し、自民党の裏金問題について釈明、謝罪を重ねた。
だが、語る内容は国会答弁の繰り返し。安倍派の裏金についても、「はっきりした経緯や日時などについては確認できていない」と曖昧な答えばかりで真相解明にはほど遠いものだった。
政倫審の中継中、ニコニコ生放送では岸田首相の釈明内容に、「話の中身はカラッポ」「のらりくらり」「岸田さんマジ何言ってるかわかんね」など大量の書き込みが流れ続け、批判が殺到していた。
そんな岸田首相の窮地を救ったのが特報だった。2月29日の午後4時42分、NHKは岸田首相に続いて元二階派事務総長の武田良太・代議士の政倫審中継中に、〈大リーグ・大谷翔平選手が結婚を発表 相手は日本人女性 インスタグラムで発表〉とテロップを流し、その後のニュースで速報。民放も午後5時のニュースで「大谷選手結婚」をトップで報じ、テレビやネットは結婚報道一色となって岸田批判はかすんでしまったのだ。
岸田首相と大谷選手には「WBCの因縁」もある。昨年3月、閣僚の相次ぐ辞任で支持率が急降下していた岸田首相は、ウクライナへの極秘訪問で一発逆転を狙った。
ところが、折しも「岸田総理がウクライナを電撃訪問」の速報テロップが流れたのはWBC準決勝の中継中で、岸田首相の訪問がかすんだばかりか、その後のWBC決勝では大谷らの活躍で侍ジャパンが優勝し、報道はWBC一色となって岸田首相の狙いは空振りに終わった。
「ウクライナ訪問の時は岸田総理は大谷選手に完封されたが、今回は大谷選手の“特大の一発”に助けられた」
自民党内からはそんな声まで上がっている。