警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、米ニューヨークで逮捕、起訴されたヤクザの組長を名乗る日本人の事件について。
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2022年4月、デンマークの倉庫でロケットランチャーを構える一人の男の写真が世間を騒がせた。米司法当局がニューヨークで逮捕したと発表したのは自称「ヤクザの組長」エビサワ・タケシ被告(60歳)。そしてこの2月、この男が再び注目される事態となった。ニューヨーク司法当局が「日本のヤクザの組長を核物質密売容疑」で起訴したと広報したのだ。
2019年頃からタイ人の男ら3人と共謀し、麻薬と武器の闇取引を行おうとして、ニューヨークで逮捕されたエビサワ被告。ミャンマーの反政府勢力が武器を探しており、その見返りとして覚せい剤やヘロインを必要なだけ渡せると取引を持ち掛けたというが、その相手は米麻薬取締局のおとり捜査官だった。ロケットランチャーはおとり捜査官らがデンマークの倉庫に用意したもので、写真もこの時のもの。道理でこのような写真が米当局の訴追資料から出てきたわけだ。
今回はエビサワ被告らと接触した際、おとり捜査官が受け取ったという黒い物質と放射線測定器の写真がニュースに流れた。黒い物質からはウランやプルトニウムなどの核物質が検出されたという。ミャンマーから他国へ密売しようとしたようだ。
米当局が「ヤクザの組長逮捕」と発表した時、日本のヤクザ業界でもこのニュースは話題になったのか、現役の指定暴力団のある組長に尋ねてみた。「話題にもならなかった」と返事は素っ気ない。「ヤクザと聞くと、まずどこの組織か?と思うが、どこの誰だか全くわからない。組織で名のある人物であれば騒ぎになると思うが…」というところらしい。ヤクザ界隈では、エビサワ被告のことを歯牙にもかけなかったようだ。
ヤクザは米国へ入国できない
その理由は簡単だ。エビサワ被告が「あちこち海外に滞在していることから、それなりに自由に行き来ができる人物」(組長)だったからだ。エビサワ被告が逮捕されたのは、米国ニューヨーク。東南アジアの国ならヤクザでも入国できる国はある。しかしヤクザが米国に入国できないことは業界では周知の事実だ。