ハラスメントの問題が浮上すると、それを男女や世代、地域などの社会的な要因からくる受け止め方の差によるものだと結論づける人が多いだろう。だが、本当にそれは問題に関わる人たちの属性の違いが引き起こす摩擦なのだろうか。涙を流して辞任を決めたと会見したことでも話題の岐阜県岐南町の小島英雄町長(74歳)が起こしたセクハラ行為とパワハラ行為の数々をめぐり、世代や時代が違うからという弁明は事実と合っているだろうか。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、時代や世代を理由にしがちなことに対する高齢者の本音と不満を聞き、問題の本質を考える。
* * *
「年寄りだって他人の頭、まして大人の女性の頭をなでたりなんて普通はしないよ。年齢とか時代じゃなくて、岐阜の町長がおかしいだけだ」
東京都心、筆者と高齢者の方々の集まり。参加した70代から80代男性の方々から出た声は「普通はしない」だった。
「普通しないよ、高齢男性だからって決めつけられたくない」
その「普通しない」行為を始めとする行為の数々、いやそれ以上の行為の数々を繰り返していた彼らと同世代、74歳の町長がいた。彼は当初「私らの時代は頑張った子の頭を撫でた」としていた。
その岐阜県羽島郡岐南町の小島英雄町長(本稿、肩書きは2月29日当時とする)が女性職員ら複数に日常的なセクハラ行為、男女問わずのパワハラ行為を続けていたとされる問題である。
岐南町は弁護士らによる第三者委員会を立ち上げて全職員(退職者含む)271人(男性134人、女性137人)にヒアリング(回答者205人、男性102人、女性103人)した結果、少なくとも99件のセクハラ行為があったことを認定、そのセクハラ行為の内容の詳細を2月27日、「調査報告書」並びに〈町長による不必要な身体接触・不快な言動の一覧〉というリストとともに公開した。
(※以下、本稿〈〉内はすべて2月27日発表の調査報告書より抜粋)
〈「頭をポンポンと触る」行為が、回数としては最も多く見受けられ、各人において回数の差はあるものの、ヒアリングに応じた女性職員の内22人から不快であるとして、被害申告があった。〉
〈多かったのは、女性職員の手に触れる・触れさせようとする行為であった。手法としては、「手相を見たる」等と言って女性職員に手を出させ触れる、あるいは「俺の手は白いやろ(すべすべやろ)、さわってみ」などと言って手を触らせようとするという方法〉