今後30年の間に70%の確率で発生するといわれる首都直下地震。千葉県沖で頻発する地震の影響でそのXデーに注目が集まっている。そんななか、政府が触れないデータが明らかになった。
わずか9日間で36回──これは、2月26日以降に発生した千葉県沖を震源とする地震の回数だ。そのうち3回は震度4の大きな揺れを観測した。
能登半島を襲った元日の大地震の記憶も生々しい中、今度は房総半島に巨大地震のリスクが迫っている。
「同じエリアで地震が頻発しているのは、陸側のプレート(厚い岩盤)がゆっくりとずれ動く『スロースリップ』と呼ばれる現象が起きているためと考えられます。この現象は千葉県東方沖の周辺で一定の周期で発生しており、過去のケースでは数か月地震が続きました。最大震度5を観測したこともあります」(東京大学地震研究所教授・小原一成さん)
スロースリップは東日本大震災(2011年)の前にも観測されており、巨大地震発生のシグナルと考えられる。同現象で繰り返し発生する「群発地震」を危険視する専門家も少なくない。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんもそのひとりだ。
「能登半島地震や熊本地震(2016年)でも、大地震発生の少し前から周辺の地域で群発地震が起きていました。さらに、大正時代の関東大震災(1923年)の発生前にも、房総半島周辺や神奈川県西部で地震が相次いで発生していたという記録が残っています。千葉県沖の群発地震は、大地震発生の危険性が高まっていることを意味しています。数週間から数か月以内に、関東地方で大きな地震が発生する可能性があります」
恐怖を助長する、不気味なデータもある。
東海大学と静岡県立大学で客員教授を務め、日本地震予知学会の会長でもある長尾年恭さんが解説する。
「千葉県の房総半島沖では1912年、1950年、1987年にマグニチュード(以下、M)6以上の大地震が37〜38年周期で繰り返しています。偶然との見方もありますが、今年は前回の地震から37年目に当たるのです」
房総半島沖でM6以上の地震が発生した場合、房総半島の震源近くは震度6弱から6強、東京23区も場合によっては震度5強ほどの強い揺れに襲われるという。過去3回の地震は、M6.2(1912年)、M6.3(1950年)、M6.7(1987年)と徐々に地震規模が大きくなっているため、次の地震がM7クラスになるのではとの見方もある。長尾さんが続ける。
「万が一、房総半島沖でM7クラスの地震が発生すれば、首都直下地震が誘発されることも考えられます。政府の地震調査委員会は千葉県沖の群発地震に関して、“5〜6年周期のスロースリップ現象”についての見解は発表していますが、“37〜38年周期”の地震には言及していません。不安をあおり混乱を招きたくないという考えがあるのかもしれません」
つまり今年か来年に、首都直下地震が発生する可能性があるのだ。
「首都直下地震」とは、東京都や近隣県の内陸を震源とするM7クラスの地震を指す。政府は「30年以内に70%」の確率で発生するとしている。