昨年7月、フジテレビを定年退職したことで話題となった元アナウンサーの阿部知代さん(60)。アナウンサーとして活躍した後、報道局に異動。現在も引き続き報道局の同じデスクで働いている。数々の看板番組に出演した人気アナウンサーは今、どんな仕事をしているのか。阿部さん本人にインタビューした。【全3回の第1回】
昨年11月には自身のX(旧Twitter)にアナウンサー時代の上司だった露木茂さん(83)との2ショット写真を掲載。その懐かしい姿には約3万件の「いいね」がついて注目された。阿部さんは「私のX史上、最大の反響でした!」と笑う。今の仕事内容について聞いた。
「退職前と同じ報道局の同じデスクで仕事をしているから、定年退職したって気づいていないスタッフもいるくらい、以前と変わらないんです。今は週2回のリモートワーク以外は朝9時前に出勤しています。私の仕事は大きく分けてふたつです。ひとつは「用語」、言葉に関する仕事です。例えば「持続可能性」を意味する“Sustainability”の表記は“サス『テイ』ナビリティ”か“サス『テ』ナビリティ”かなどを検討したり、“敷居が高い”の『高級すぎて入りにくい』という意味を認めていいのか議論したり。本来は『不義理があって行きにくい』とう意味ですよね。
もうひとつは「研修」。用語と関連して、誤用しがちな言葉を確認する研修もします。例えば“失笑”は『とほほ』というニュアンスで使われがちですが、本来の意味は『思わず笑ってしまう』こと。また、マイクの持ち方やカメラの前でどう動くかなどリポートの研修も行います。近年はLGBTQ+についての勉強会も開いています。
学生時代から周囲にゲイやバイセクシャルの友人がいたし、2012年からNY支局に勤務した経験も大きいです。帰国後は、日本最大のLGBTQ+イベント『東京レインボープライド』の司会を担当し、今もメディア連合でパレードに参加しています。その経験やネットワークがあって、今も勉強しながら研修をしています」
阿部さんは25年以上も日本新聞協会の用語懇談会の委員を務めている。この会は全国の新聞社や通信社、放送局などの委員が参加し、用語ルールを定めた「新聞用語集」の改訂作業や、言葉の使用実態の報告や意見交換が行われる場だ。
「用語は知識の蓄積が大事です。古い言葉と新しい言葉を知り、この言葉を新聞や放送で使うべきかを議論します。言葉は世代や地域などにより感覚が異なりますから、他社の方と議論をするのはとても楽しく、学びも多いです」