「僕はりりちゃんには男性に対する憎しみがあると思っていた。言動とか雰囲気は、穏やかで接しやすい子で、一見男性に媚びている感じなんですけど、結局男性を騙してるわけじゃないですか。その根底にはやっぱり男性に対しての“憎悪”があり、だからこそ、おぢ相手の詐欺ができた。彼女は僕に『男性になりたい』と話していたこともありましたが、それはまったく意外なことじゃなく、単純な話で、女性と違い、男性になれば、あまり“性”を売りものにしなくてもいいと思ったんでしょうね。
そもそもいつか捕まると思っていたし、むしろ遅かったと思う。彼女がしたことは犯罪ですし、逮捕されたことについては一切、同情はない。当時、僕は彼女に自首を勧めたこともあった。りりちゃんはしぶっていたけれども、あの時、出頭していれば、もっと罪は軽く、追徴課税が4000万円に上ることもなかったのではないかと思う。
りりちゃんとは手紙のやりとりをしたり面会に言ったりしようとは一切思わないけれど、もし会ったとしたら“ほら、やっぱり僕の言ったとおりだっただろう?”と言いたいですね」
逮捕から半年が経過し、ホス狂い時代には考えもしなかったであろう「将来」について思いを馳せ、一歩を踏み出そうとする渡辺被告。しかし当たり前ではあるが、前途は決して明るいものではない。
2月16日。名古屋地裁で行われた追起訴審理では、風俗店やマッチングアプリで知り合ったという50代の男性2名から約1億1700万円を詐取したという起訴内容を認めた。
午前10時、名古屋地裁第一法廷に入ってきた渡辺被告は、髪の毛を蛍光オレンジのゴムで一本に結び、二度目の接見でも着ていた、犬のイラストの描かれたグレーのスウェットを着ている。公判の数日間には、面会ができないほどの体調不良だったこともあってか、スウェット越しに、丸めた背中の肩甲骨が突き出してみえるほど痩せて見えた。
法廷では「男性を彼氏とよび、闇金から追い込まれているとウソをついたこと」「お金がないと『死ぬ』といいお金を振り込むと『大好き』と繰り返した」とことなどが立て続けに明かされたが、渡辺被告は、うつむいたままで、その表情からは心中は杳としてしれない。さらには、“所得”を隠していた罪にも問われ、4000万円もの追徴課税を課せられる身となった。25才であまりにも多くの罪を背負うことになった。
《私は、ごくちゅうで一番勉強したひとになりたいです!》
筆者への手紙にそうも綴っていた渡辺被告の次回公判は、3月15日。名古屋地裁で開かれ、結審を予定している。