“頂き女子りりちゃん”を名乗り、複数の男性から総額2億円をだまし取り、さらにそれらの“所得”を申告せず4000万円を脱税したとして、現在公判中の渡辺真衣被告(25才)。逮捕前に配信していた動画で見せた金髪にピンクのスウェット姿や「おぢ」と呼ぶ年上男性たちから金銭を搾取するテクニックをまとめた「マニュアル」を販売していたこと、だまし取った金銭の大半をホストクラブにつぎ込むいわゆる“ホス狂い”だったことなど、彼女の“素顔”が明らかになるにつれて一部でカルト的な話題を呼び、裁判中の一挙一動が報道されている。渡辺被告はいかにして“りりちゃん”になり、逮捕されたいま何を思うのか──『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』の著書があるノンフィクションライターの宇都宮直子氏が、彼女の痕跡を追った。(連載3回中の3回目)
* * *
《女の子がホスクラに行かなければ、被害がでません。って状態じゃなくてホストクラブの今の観念すてさって、女の子がきても安全ですって状態にしなければ》
ホス狂いとしてどっぷりつかっていた東京・歌舞伎町の未来について、そんな風に憂いながら、居心地の悪い家庭で育ち、とりわけ父親との確執があったことについて言葉少なに口にする──渡辺被告とのやりとりは「歌舞伎町」と「自らの過去」に大半が占められていたが、接見や手紙を重ねるうちに、少しずつ変化が現れてきた。
「私、勉強がしたいんです。基礎学力をつけたい」
2回目の接見の際、渡辺被告がそんな風に話していたことを思い出し、英語の参考書を差し入れたことがあった。その後に筆者に届いた手紙には《英語の参考書、はちゃめちゃうれしいです!!届いてからずっーっとこれ見ながら勉強しています!》(以下・《》内は渡辺被告からの手紙のママ)と熱烈な謝辞とともに「勉強したい」と切実に思った理由についても、こうしたためられていた。
《今、義務教育の期間を取り返す絶好のタイミングだと思っています。知識を得ることで、自分への自信をたくさんつけて、もう自分を傷つけるほどの依存をやめられるようになりたいです》
“義務教育”の中でもとりわけ学び直したいと切望していたのが「国語」だった。手紙には《私には会話コンプレックスがあるからです》という前置きの後に《私は学生時代、人と会話することがほとんどできませんでした。小、中学の時はぼーっとしていて ほとんどのことに興味関心がなく、みんなの話す話題や会話のスピードについていくことができませんでした(中略)自分でも、私と話してもみんな楽しくないと自覚していて、普通に会話できているような人たちがすごくうらやましかった》と綴られている。