お笑い番組に出演する女優に今、注目が集まっている。女優として人気を確立させたポジションにいながら、「お笑い好き」を活かし番組MCなども務めているのだ。彼女たち「笑いをわかっている女優」の好感度、そして番組にもたらす効果とは? 放送作家でコラムニストの山田美保子さんが解説する。
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3月9日、関西テレビ・フジテレビ系で放送された『R-1グランプリ2024』。今回から芸歴制限を撤廃したことや、大阪の36歳会社員だというアマチュアの「どんくさいスイッチ企画」が決勝に進出し、好成績を収めたこと。おなじく決勝進出者の「サツマカワRPG」が番組終了後、「でか美ちゃん」との結婚を発表したことなど話題満載だった。
さらに審査員を務めていた「マヂカルラブリー」の野田クリスタルが、続く『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)のトップバッターを務めることで両番組の出演者が声を掛け合い、視聴者をそのまま連れてくることに成功。
その時間でもっとも目立っていたのは、『R-1グランプリ~』で「霜降り明星」とMCを務めていた広瀬アリスと、『ENGEI~』で「ナインティナイン」のMCを務める松岡茉優の、ほのぼのとした掛け合いだった。
番宣番組でもトークスキルが光る
広瀬は2021年から、松岡は2015年から担当しているため、お笑いファンからは「笑いをわかっている女優」と位置付けられている。
広瀬も松岡もいまや主演女優であり、コメディエンヌとしての才能があると評価されているうえ、実際、お笑い好きなので、番組中、彼女たちが出場芸人のネタを面白がるか否かをMCの芸人が確かめる場面も度々見られる。
だからと言って、いまやバラエティ番組のレギュラー回に簡単に出てくれるような2人ではないのだが、番宣を背負って出演する際などには、2人のトークのセンスが際立って光っている。さすがは芸人だらけの番組を担当しているだけあって、笑うタイミングや間の置き方などで若手の女性バラエティタレントの上をいく広瀬と松岡なのである。
こうして主演女優が、特番とは言え、お笑い番組のMCを務めることは、ひと昔、いや、ふた昔前なら考えられなかったと思う。
「ウチの〇〇はもう、そのクラスではないので」と所属事務所が断ることは簡単で、たとえば松岡の場合は、映画『万引き家族』や『勝手にふるえてろ』の演技で各賞を受賞したタイミングで、事務所がそのような判断をしたとしてもおかしくはなかった。
実は筆者は以前、『正直女子さんぽ』(2015年・フジテレビ系)という番組で松岡と仕事をしている。関根麻里、柳原可奈子と松岡の3人による“街ぶら”番組だったのだが、最年少で、バラエティにもまだ慣れていなかった松岡は、独特の目線やワードをもっているものの、先輩2人を前に消極的にならざるを得なかった。
わずか1年で終了した“街ぶら”番組を経て、その後の一気に主演女優への道をかけあがるのだが、その一方で『ENGEI~』のMCは、やりたかった仕事だったのだろう。これは事務所の戦略や事情というよりは松岡の強い意志によるものではないかと思った。