2024年春のJR東日本ダイヤ改正は北陸新幹線の金沢-敦賀開通が目玉だったはずが、京葉線の通勤快速廃止がちょっとした炎上状態になっている。「千葉都民」と呼ばれるほど、千葉県に住んで都内で働く人が多いことから影響を受ける人が多いためだ。ライターの宮添優氏が、3月16日ダイヤ改正で京葉線通勤快速が廃止されることで人生設計が狂いかけていると訴える人たちの声をレポートする。
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「片道20分、トータルで40分も通勤時間が増え、子供の送り迎えすら難しい。鉄道は公共交通機関であり、ライフラインのはずです。なのに、利用者の要望はほとんど無視されている。新生活がどうなるのか、家族みんなが、今から不安でしょうがない」
千葉県のちょうど中央に位置する大網白里市在住の会社員の松田直人さん(仮名・40代)は、東京・有楽町の会社まで、JR京葉線へ乗り入れる「通勤快速」を利用して毎日通勤している。朝5時半に起床し朝食などをとり、保育時間がスタートする7時ぴったりに子供を保育園に送ると、そのまま駅まで自転車で猛ダッシュ。午前7時過ぎの東京行「通勤快速」に飛び乗り、1時間強で会社に到着する。時刻表通りならば始業の9時には余裕をもって到着できるのだが、湾岸部を走り、かつ他線の影響を受けやすい京葉線は遅延も多く、もとより、定時出社が難しくなることは珍しくない状況ではあった。そんな中、京葉線を管轄するJR東日本は、3月のダイヤ改正で、朝夕ラッシュ時の「通勤快速」を廃止し、全ての列車を「各駅停車」に変更すると発表。
この発表に、松田さんをはじめとした、京葉線通勤快速ユーザーが猛反発。千葉県知事や千葉県内の財界関係者からも、あまりに一方的で強引だと、苦言があちこちから上がっているのだ。
「都内に通えて程よい田舎で、家賃も駐車場代も安い。コロナ禍で在宅ワークが増えたことをきっかけにこちらに引っ越してきましたが、このままここに住むメリットが無くなった。いや、このままだと今の生活が崩壊してしまうのです。引越しも考えていますが、まさか電車のダイヤのせいでこうなるなんて、想像もしていなかった」(松田さん)
松田さんの場合、確かに状況は気の毒ではあるが、コロナ禍をきっかけにした自主的な疎開の側面が強い。そのため、今後、通勤に便利な場所に引っ越すことで問題は解決するかもしれない。だが、一時的な移住ではなく、その場所に永住しようとしていた人たちからは、もはやすべてを諦めたような、弱々しい訴えばかりが聞こえる。
千葉駅の隣、JR京葉線快速電車が千葉県内で「最後に」停車する蘇我駅を利用する、千葉市在住の団体職員・藤原亮子さん(仮名・40代)が重い口を開く。