大相撲の長い歴史において、白鵬はいくつもの偉大な記録を保持している。ところがその実績をもってしても、親方としての彼の立場は驚くほど危うい。根深い相撲協会との因縁が、弟子の不祥事をきっかけにまたしても表出した。
《現役力士と未来の力士の意思が尊重される事を祈りつつ、今回の宮城野部屋閉鎖という処遇への断固反対を訴えます》
そう綴られたオンライン署名運動は、著名なアーティストらが連帯を呼びかけ、立ち上げからわずか3日で6000を超える賛同が集まった(3月12日時点)。歴代最強横綱がいままさに“土俵際”に追い詰められている。【前後編の前編。後編を読む】
弟子が暴力行為、顔面への平手打ちや突き飛ばし
相撲界には5つの「一門」があり、全部で45ある相撲部屋はいずれかの一門に属している。
現在大阪で開催中の春場所の千秋楽後に、宮城野部屋が閉鎖されるのが濃厚だ。宮城野部屋は、幕内最多の45回の優勝を誇り、通算最多の1093勝の元横綱・白鵬(現・宮城野親方)が親方を務める。
「親方と力士たちは、同じ一門内の別の部屋に振り分けられることになります。場所前の一門の話し合いでは、別の親方が部屋を継承する案も出ましたが、日本相撲協会側から“厳罰”の意向が示されており、部屋の消滅は避けられない状況です」(大相撲担当記者)
宮城野部屋の複数の力士は、引退の意向もほのめかしているという。白鵬のもとで修行が積めないなら、相撲界にいる意味はないということのようだ。
きっかけは、宮城野部屋の所属力士による、後輩力士への暴力行為だった。
「幕内の北青鵬(ほくせいほう)が後輩に対し、一昨年7月から昨年12月にかけて顔面への平手打ちや突き飛ばし、ほうきの柄で叩くなどの暴行を行っていました。そればかりか、睾丸を平手打ちしたり、財布に瞬間接着剤をつけて損壊させたり、殺虫剤のスプレーに点火しバーナーのようにして炎を体に近づけるなど、目を覆うような悪質ないじめが横行していました」(前出・担当記者)