国内

《死刑ではなく無期懲役》工藤会裁判でトップが求めた「公正さ」への違和感 現役組長が語る「暴力団は公正や公平とは正反対の組織だ」

一審の死刑判決が、二審では無期懲役に(イメージ)

一審の死刑判決が、二審では無期懲役に(イメージ)

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)による4件の市民襲撃事件で殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などに問われた控訴審判決に見る、ヤクザと法の下の平等について。

 * * *
「本日の福岡高裁の判決、死刑取り消し無期に落ちました」

 4つの市民銃撃事件で殺人の罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会トップで総裁の野村悟被告(77才)と、ナンバー2で会長の田上不美夫被告(67才)の控訴審判決が3月12日、福岡高裁で言い渡された。判決が速報で流れると即、ある指定暴力団の某組長から先のようなメールがきた。反応が早い。それだけこの裁判の判決に、暴力団業界が注目していたということだろう。

 一審の福岡地裁の判決で死刑判決が言い渡されると、野村被告は裁判長に向かって「公正な判断をお願いしたけど、全然公正じゃないね。全部推認、推認、推認。こんな裁判あるか。あんた、生涯、この事を後悔するよ」と脅すような強い口調で発言した。2人が事件に関わったという直接的な証拠はなく、判決は推認によって言い渡されたのだ。4つの事件すべてで野村被告が首謀者と認め死刑、田上被告は無期懲役。

 トップに死刑判決が出たことで、田上被告は控訴審で4つの事件のうち2つについて「独断で指示した」と関与を認めた。「後出しジャンケン」とネットなどで揶揄されていたが、「組員がやったことでトップが死刑になるなど、彼らの世界ではあってはならないことだ。この判決がどう出るかは組の存続にも関わる。彼らも必死だったのだろう」と元刑事は話す。

「組合長射殺事件は無罪」と某組長から続けてメールが入った。今回、野村被告が無罪となったのは1998年、今から26年前に北九州市小倉北区の繁華街で、漁業の元組合長が射殺された事件だ。裁判長は「野村被告の意向を確認しなければ、独断で犯行を実行できないとする推認には限界がある」と述べた。この当時、工藤会はまだなく存在したのは前身の工藤連合、野村被告はその傘下組織である田中組の組長だった。他の3つの事件は野村被告が工藤会トップになってから起きているが、この事件だけは違ったのだ。そのため元組合長を殺害する動機があったとはいえないとし、被告が首謀者とは推認できないとされた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【約4割がフジ社内ハラスメント経験】〈なぜこんな人が偉くなるのか〉とアンケート回答 加害者への“甘い処分”が招いた「相談窓口の機能不全」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【被害女性Aさんが胸中告白】フジテレビ第三者委の調査結果にコメント「ほっとしたというのが正直な気持ち」「初めて知った事実も多い」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン