延命治療への考え方に変化

延命治療への考え方に変化

死期を引き延ばす延命治療は一切お断り

 3人目は医師・作家の鎌田實さん。鎌田さんは、元気なうちの意思決定が重要だと話す。

「僕は2005年から長野県茅野市のボランティア団体が作成した『尊厳死の宣言書』というカードを所持しています。そこにはおおむね以下の内容が記されています。

《1、私の病が現在の医学では不治の状態にあると診断された場合、死期を引き延ばす延命処置は一切お断りします。
2、ただし、私の苦痛を和らげる処置は最大限にお願いします。
3、私がいわゆる植物症に陥り、なお意識の回復の見込みがないと2名以上の医師が判断した時は、家族の同意を条件に一切の生命維持装置を止めてください》

 仮に僕が重病を患って意識がなくなったら、“ここを乗り越えれば助かる”という場面は全力で治療してもらい、その後3か月経っても植物状態が続いたら家族が主治医にカードを見せ、『この先の透析や人工呼吸といった延命治療は、本人が望んでいないので不要です』と伝える手はずです。

 救命医療としての輸血や点滴は必要ですが、もう治らない状況で輸血や点滴、人工呼吸や透析をして寝たきりのまま生きるのは、治す医療ではなく命を延ばすだけの医療です。治療としては同じ形態でも、患者の置かれた状況によって救命か延命かが変わる。僕にとっては、生きている間においしいものを食べ、面白いことができることが何よりも大事。そのためならどんな治療も受けますが、何もできない状態が続くならば受けたいとは一切思いません。

 ただし本人の意識がなくなった場合、残された家族が『何もしないでください』と医師に告げることを求めるのは非常に酷な話です。だからこそ本人が元気なうちに意思決定し、それを記した書面を残しておくことが望ましいんです」(鎌田さん)

(第4回へ続く。第1回から読む

※女性セブン2024年3月28日号

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