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【3人の医師が考える延命治療】大切なのは「家族との話し合い」や「考えるプロセス」、長生きのための“無理な節制”への懸念も

(写真/アフロ)

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 医療の進歩によって「死に方」を選べるようになった今の時代。自らの最期を考えるうえで大きなテーマとなるのが「延命治療」だが、一方では過度な延命治療への問題点も指摘される。3人の現役医師に、延命治療について率直な意見を聞いた。【全4回の第4回。第1回を読む

 1人目は、永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長で緩和ケア医の廣橋猛さんだ。廣橋さんは、「もう助からないなら、延命治療は受けない」と語る。

「医師として助かる病気か、どうにもならない病気かはわかります。頑張れば助かりそうな状況なら、治療を続けようと思います。

 ただし治療しても以前の状態に戻らないなら話は別です。たとえば脳出血で脳の中枢をやられて意識が戻らなければ、それ以上の延命治療を受けるつもりはありません。状態が戻るかどうかは担当医の判断ですが、もし自分に意識があれば、担当医から話を聞いて自分で判断したいと思います。

 延命治療を考える際に大切なのが、家族との話し合いです。自分にとって延命治療とは何か、自分はどう生きたいのかという価値観にまで踏み込んで話しておけば、完全な答えでなくても、何かがあったときの判断する根拠になります。

 私の父が急病のため亡くなる少し前、延命治療について話す機会があり、『機械につながれてまで生きたくない』という思いを聞いていました。おかげで実際に父が倒れた際、救急医とスムーズな意思疎通ができました。

 明確に延命治療が不要な人は、事前に家族全員に告げておくべきです。『もう治療はいりません』と医師に宣告し、配偶者や親の死を後押しするのは家族にとって十字架を背負うに等しい。本人の意向をクリアに伝えておけば、家族が苛まれる罪深さや自責の念を軽減できます」(廣橋さん)

周りが早く死んでほしいなら、はいどうぞ

 2人目は、精神科医の和田秀樹さんだ。和田さんは、周囲の人々の気持ちに寄り添うスタンスだ。

「本当に延命治療が必要になったとき、僕は意識がないはずです。死ぬ間際に点滴や人工呼吸器をする延命治療は周りの人が勝手に決めればいい。生前に延命治療についての意思を家族に伝えておく方法もあるけど、あまり関心はありません。

 判断を迫られたときに周りが『早く死んでほしい』と思うならそれに従うし、『1秒でも長く生きてほしい』と思ってくれたらありがたい話です。子供がお金に困って、『親がいれば年金をもらえるから延命しよう』と考えるなら、子供のために生きていてあげたいと思いますよ。

 それより問題は、長生きしたいからと無理な節制をすること。人はみな死ぬのだから、高血圧や糖尿病、メタボなどの予防や治療はすべて寿命を延ばすための延命治療ですよ。そういう延命治療こそ断固拒否し、食べたいものを食べて飲みたいものを飲んでいます。

 日本には大規模比較実験のデータがなく、薬で血圧や血糖値を下げても、薬をのまない人と比べてどれだけ長生きするかわかっていません。薬や節制で延命できるというエビデンスがないんです。

 しかも日本は心筋梗塞や脳梗塞で死ぬ国ではなく、国民の死因トップはがんです。がんの予防で最も大切なのは免疫力なので、健康のために塩分やアルコールを控えることでかえってストレスが高まり、免疫力が下がってがんになりやすい可能性があります。だから死の間際の延命治療を考えるよりも、日常的な延命治療の可否を問題にすべきです」(和田さん)

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