自民党の派閥パーティをめぐる裏金問題では、事務総長経験者でキーパーソンとされる下村博文・元文部科学相が政治倫理審査会に出席したが、新しい事実は何も明かされなかった。国民は給与天引きや確定申告で1円単位まで徴収されるのに、政治家は納税もせずに裏金を使える──そんな不公平に、政治不信は頂点まで高まっている。全国商工団体連合会(全商連)は裏金について議員らの税務調査を実施するよう国税庁に要請書を提出したが、税務当局の腰は重い。NEWSポストセブンの調査・取材によって、他ならぬ税務職員たち自身の“カネにまつわる不祥事”が次々と明らかになった。
昨年4月には、香川県の税務署に勤務する50代男性職員が14年間にわたって、実際には扶養していない両親を扶養しているかのように装い、扶養手当や期末手当など268万円を不正受給していたことが報じられた。
「この職員はさらに、扶養控除や医療費控除の適用を受け所得税など185万2800円を“節税”していたこともあって、停職1か月の懲戒処分を受けて退職していたことが明らかになりました」(全国紙社会部記者)
この件は大々的に報じられたが、今回の調査で、税務署職員の金銭にまつわる不正が横行していることが明らかになった。
NEWSポストセブン取材班は全国に12ある国税局に対して情報公開請求を行い、2023年1月1日から12月31日までの1年間に処分が発令された事案について、各国税局とその管区内の税務署の職員に交付された「処分説明書」、および「訓告」や「注意」などの内容を記した行政文書を入手した。
国家公務員法が定める懲戒処分は厳しい順に「免職」「停職」「減給」「戒告」があり、その下に「訓告」「厳重注意」「注意」などの軽い処分がある。
今回、開示された「処分説明書」や行政文書は144件分。その中には「虚偽の確定申告」「脱税」「不正受給」などお金にかかわる不祥事が散見された。
たとえば東京国税局管内の職員に対して発令させた処分説明書にはこうある。
〈所得税及び復興特別所得税の確定申告において、正当な金額よりも多く還付金を受け取る目的で、×××不動産所得の収入金額を過少に申告したほか、支払い事実がない架空の経費を計上するなどして、虚偽の内容の確定申告を作成及び提出したことにより、総額1,764,441円の還付金を不正に受領した〉(処分説明書・行政文書からの引用、以下〈 〉内は同。×は黒塗り部分)
関係者によると、この職員は都内の税務署で「上席国税徴収官」をしていた40代後半の男性で、副業のマンション経営の赤字額を水増しするなどで虚偽の確定申告を行い、2017年からの5年間に所得税の還付を不正に受けていた。
「東京国税局の聞き取りに、この職員は『投資用マンション購入時の借金返済が難しくなった』と話しました。懲戒免職処分が下された職員は重加算税を含め約236万円を追徴課税され、全額納付したようです」(地方紙社会部デスク)
国税を徴収する者が事実上脱税を図っていたしていた本件では、もっとも厳しい「免職」処分となった。
一方で、広島国税局管内の職員は、〈相続税の申告について、無申告であった〉と指摘されて訓告。また、沖縄国税事務所管内の職員は義父母が所有する物件に住み家賃を支払っていたが、その義父母に生活費を支払ってもらっていたことが発覚し、〈実質的に家賃を支払っていなかったにもかかわらず、住居手当合計×××円を不適正に受給した〉として訓告となった。受給額は数十万円以上になるとみられる。意図的な脱税は免職で、無申告や不正受給は軽い処分ということなのだろうか。
大阪国税局管内の職員は、勤務中に小遣い稼ぎをしていた。
〈ネットオークションを利用し、反復継続して、自動車関連部品の販売を計×××回行い、合計×××円の利益を稼得したほか、当該利益について、令和×年分から令和×年分の所得金額に含めずに申告を行い、適正な納税義務の履行をしなかった〉
この職員は勤務中に私的なネットオークション取引を行っていただけではなく、一般企業の課税実績を私的な目的で検索したことも発覚して訓告となった。