2015年8月、結成100年の節目に分裂した山口組。今年の夏で10年目となるが、まだ決着していない。なぜ「山口組分裂抗争」は終わらないのか──。フリーライター・鈴木智彦氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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では、なぜ抗争が終わらないかといえば、終戦処理が進まないからだ。圧倒的に優勢な状況にある六代目山口組は、神戸山口組に参画した組長たちの一部を除き、命の保証をした上、財産を保全する意向と伝えられる。
神戸山口組のトップである井上邦雄組長、神戸山口組から離脱した池田組・池田孝志組長、宅見組・入江禎組長らは、組を割り、謀反を起こし、司組長のメンツを踏みにじったのだから、六代目山口組から見れば「重罪人」だ。にもかかわらず、組織を解散して引退し、組員を戻せば免責するというなら、破格の温情措置である。
それなのにどうして六代目山口組の終戦処理案を拒否するのか。
「簡単な話、そんな都合のいい話を信じられないのだろう。盃を踏みにじり、謀反を起こし、同じ山口組を名乗って新組織を旗揚げした。特定抗争指定暴力団となってからは本部をはじめ、主要な組事務所も使えない。これほどの損害を与えているのに『戻れば不問です』といわれても、そんなうまい話があるかと勘ぐってしまう」(六代目山口組と親交のある関東広域団体幹部)
なにせ相手は修羅場をくぐり抜けてきた高山若頭だ。猜疑心を抱く気持ちは分かる。
ある警察筋は、さらなる事情があると分析する。
「井上組長も池田組長も家族がいる。条件を呑んで解散した後、約束を反故にされ、家族にまで影響が及ぶことが心配なのでは」
首謀者たちの根底には“高山清司アレルギー”があるようにみえる。なにしろ今回の山口組分裂抗争は、なにからなにまで“高山清司”だ。高山若頭が辣腕すぎて、次世代も弘道会支配が続くと確信した組長たちは、高山若頭が懲役となった間隙をついてクーデターを起こした。一進一退の状況は、高山若頭の社会復帰で一気に片が付き、今度は高山若頭を信じられずに終結が頓挫している。山口組史上、ここまでの影響力を誇った若頭は他にない。