芸能

【追悼・山本陽子さん、絶筆を公開】出演予定だった舞台の台本への書き込み、最後まで失わなかった情熱

▽ヤマモトヨウコ 
女優 
(テレビ朝日ドラマ「黒革の手帖」製作発表会見。東京・六本木のグランドハイアットホテル)

山本海苔店のCMには長年出演。2010年にはギネス記録を達成

 流麗な筆致で書き込まれたフレーズの数々。2月に急逝した女優・山本陽子さん(享年81)が残した台本には、彼女が演じるうえで気になった言葉たちが、時に強調されながら刻み込まれていた。半世紀以上にわたって演じ続けた大女優の絶筆を公開する。

「山本さんは稽古に参加するつもりでずっといたわけですし、稽古場にいたいだろうなって。だから、山本さんの遺品となったこの台本は、稽古中は演出家さんの隣に置いて、みんなを見守ってもらっています」

 こう語るのは、4月5日から東京・江東区文化センターにて上演される舞台『そして誰もいなくなった』の関係者だ。

 この作品は、女優・山本陽子さんの最新作になるはずだった。しかし、山本さんは2月20日に急性心不全で亡くなってしまう。本人も周囲も予期せぬ、まさに青天の霹靂だった。

「2月中もイベント出演などお仕事を精力的にこなし、亡くなったのは公演に向けた稽古を始める直前でした。コロナ禍で軒並み舞台がキャンセルとなり、彼女にとっては久しぶりの演技の仕事。それだけに、役柄は主役級ではないけれど、本人はとても喜んでいて、意欲を燃やしていたそうです」(芸能関係者)

 原作はアガサ・クリスティの不朽の名作。その作品を現代版にアレンジするなかで、山本さんにオファーされたのは、敬虔なクリスチャンで謹厳な老婦人という役柄だった。

「オファーしたら、こちらがびっくりするくらいご快諾をいただいて。マネジャーさんからも『いま、いろんなお芝居をすごくやりたがっているんです』と言っていただきました。

 1月末に台本をお渡しすることができたのですが、『どこに行くにも肌身離さず台本を持っています』『とにかく一生懸命、もうひたすら覚えています』という話を聞いていたんです」(前出・舞台関係者)

 別に掲載したのは、山本さんの絶筆となった台本の書き込みだ。自身が覚えにくいと感じたせりふや重要な文言は、繰り返し刻み込むように記されている。

「せりふがページをまたいでいる箇所は、次のページのせりふも書き込んで、ページをめくらずに済むように工夫されていました。

 昨年12月に宣伝用の写真を撮ったのですが、そのときから『どんな役どころなのかしら』と演出家のかたに質問をするなど、本当に前向きに準備をされていたんです。それだけに本番の舞台に立てなかったことはさぞ無念だろうなと……」(別の舞台関係者)

 約60年前にデビューした山本さんは、洗練された美しさで映画、ドラマ、舞台とさまざまなジャンルで活躍。

「30年ほど前、主役ばかりを演じてきたなかで脇役が回ってきて、自分のポジションがわからなくなったことがあったそうなんです。そんなとき、共演者だった平幹二朗さんに『俳優は脇役を演じるようになってからが勝負だ』と励まされ、晩年まで幅広い役柄に挑み続けていました。今回の舞台でも山本さんは、役の大小は関係なく、コロナ禍で奪われた“演じる喜び”を噛みしめていたのでしょう」(前出・芸能関係者)

 健康管理にも気を配り、最後まで情熱を失わなかった。

「日課のウオーキングを欠かさず、髪はツヤツヤでお肌も綺麗でした。山本さんは歯が全部自分のものだというのもご自慢でした。周囲の誰もが100才まで長生きされると思っていたんですが……」(山本さんの知人)

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン