一連の自民党裏金問題を告発した上脇博之・神戸学院大学教授は、「現段階では事実関係は不明だが、岸田派が裏金3059万円のうち558万円を古賀氏に渡したのだとしたら」と前置きしたうえで、「そう考えると、今回の岸田派の政治資金収支報告書の訂正には多くの問題が生じる」と指摘する。
「問題は訂正された政治資金収支報告書に岸田派から古賀氏側への資金の移動が一切記載されていないことです。特捜部は昨年12月から裏金事件捜査に入り、岸田派に未記載の3059万円の裏金があることがわかった。その段階で裏金は全額岸田派が管理していたわけですから、昨年12月から今年1月18日に岸田派が政治資金収支報告書の訂正を行なうまでの間に、558万円が古賀氏に渡ったのではないかと考えられます。
その場合、岸田派は裏金の3059万円全額を政治資金収支報告書に記載したうえで、558万円を古賀氏の政治団体への寄附として記載する。古賀氏の政治団体も岸田派から寄附を受けたという訂正が必要です。あるいは、岸田派が古賀氏の政治団体から558万円を預かっていて、それを返却したとしても、やはりその旨を記載しなければならない」(同前)
そうした適切な訂正の方法が取られていない疑いがあるわけだ。
「しかし、岸田派と古賀氏の政治団体の訂正内容を見ると、どちらも政治資金収支報告書の公表義務(3年分)がある2020年以前から558万円の過不足があったかのように訂正している。岸田派から古賀氏側への資金移動が辿れないようにしているわけです。そうした訂正は明らかに立件された事実と矛盾する。これを政治資金規正法に照らすと不記載や虚偽記載に相当する。岸田派は立件された裏金問題の政治資金収支報告書の訂正にあたって、さらに政治資金規正法違反となる方法をとっていた疑いが浮上します」(上脇氏)
なぜ岸田派が558万円の資金移動を隠すような訂正をしたのか、そして疑惑に対して岸田事務所はどう説明するのか──。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年4月5日号