自民党の裏金問題について岸田文雄・首相はこれまで「安倍派や二階派の問題」と印象づけようとしてきたが、ここにきて自身が領袖を務めた派閥に重大疑惑が浮上した。しかも、その中身というのが、裏金問題で派閥の政治資金収支報告書を訂正するにあたって、さらに“裏処理”をしていたという疑惑なのだから救いようがない。【前後編の後編。前編を読む】
東京地検特捜部は岸田派が派閥パーティー収入の「3059万円」を政治資金収支報告書に記載していなかった容疑で同派の元会計責任者を1月19日に略式起訴した。
岸田派はその前日(1月18日)に、収支報告書(2020~2022年分)を訂正した。特捜部が認定し、岸田首相が「全額派閥の口座に残っている」と説明したのは3059万円。ところが、実際に訂正された同派の政治資金収支報告書を見ると、「収入総額」と「翌年への繰越額」の金額がそれぞれ「2501万円多かった」と修正されただけだ。この差額558万円が使途不明なのだ。
そして奇妙な一致がある。岸田派が報告書を訂正した6日後の1月24日、岸田派前会長の古賀誠・元自民党幹事長が代表を務める政治団体「古賀誠筑後誠山会」が政治資金収支報告書を訂正した。理由は記載漏れで、過去3年分遡って「収入総額」と「翌年への繰越額」「前年からの繰越額」が558万円多かったと上方修正したのだ。
元会計責任者の略式起訴前に岸田派から558万円の裏金が忽然と消え、略式起訴後に古賀氏の政治団体でカネが見つかった。金額も一致する。訂正された政治資金収支報告書には、岸田派から古賀氏側への資金の移動が一切記載されていないが、この558万円が岸田派から古賀氏側への裏金キックバックなのではないかと指摘されているのだ。
前会長に頭が上がらない
ではなぜ、岸田派は558万円の資金移動を隠すような訂正を行なったと考えられるのか。
岸田派の裏金は派閥パーティーの収入の中からつくられた。仮に558万円が、古賀氏側がこれまで売った派閥パーティー券代金の一部であり、それを岸田派が古賀氏側に戻したのだとすると、政治資金収支報告書に寄附として記載すれば、「岸田派はキックバックをしていない」という首相の説明がウソになってしまう。