【週刊ポスト・医心伝身】劇症型溶血性レンサ球菌感染症が急増中だ。人喰いバクテリアと呼ばれるほど急速に症状が悪化し、致死率は3割を超え、その多くは発症から48時間以内に死亡する。好発年齢は70歳以上で、約7割が足から感染し、40度以上の高熱と短時間で腫れが広がる。治療はペニシリンの大量投与が有効だが、進行すると脚の切断が必要になる場合も。まずは手洗いと足を清潔に保つことが予防に繋がる。
2023年5月にコロナが5類相当に移行以来、感染症に対する予防意識が薄くなったことで、インフルエンザやアデノウイルスなどの感染症が蔓延している。そうした中、国立感染症研究所によると劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者が増加しており、去年は過去最多の941人だったのが、今年は前年を上回るペースで急増しているという。
通常のA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)は、ありふれた菌で子供が発症する急性咽頭炎の原因にもなる。
その一方、劇症型溶連菌とは通常菌が変異した株と考えられ、現在はM1UK株が欧米やオーストラリアで大流行していて、日本でもこの株が確認された。
東京女子医科大学病院感染症科の菊池賢教授に聞く。
「溶連菌は人から人へ感染する細菌です。人以外からは見つかっていません。溶連菌は人の体に着くと侵入し、細胞内で毒素を出して増殖します。それが劇症型の株に変異すると毒素を作るスイッチのような遺伝子が壊れるため、常に毒素を出し続けます。結果、猛スピードで症状が広がるのではと考えられており、実際に劇症型に感染すると約3割の方は亡くなりますが、ほとんどは48時間以内です」
劇症型溶連菌の約7割は足の踵や指の間などから感染する。症状は例えば朝方40℃以上の高熱があり、ふと気づくと足の先が腫れている。そして、昼には膝まで広がり、壊死してしまうという具合だ。