志村の訃報を耳にしたときは現実のように思えず、追悼番組を見ても実感が湧かなかったという

志村の訃報を耳にしたときは追悼番組を見ても実感が湧かなかったという

志村けんさんの訃報を聞き後悔したこと

──志村さんから、怒られたりダメ出しをされたりしたことは?

「怒られた記憶はないです。私が少し暴走しちゃっても、いつも笑ってくださった。逆に『今のよかったよ』とか、褒められたこともなかったけど。オチさえちゃんと成立していれば、あとはけっこう好き勝手にやっても笑顔で受け止めてくださる感じでした」

──番組では、同期のいしのようこさん(56)もご一緒でした。ライバル意識のようなものは芽生えませんでしたか。

「性格やキャラクターが対称的だったからか、そういった気持ちはまったくありませんでした。ただ、私から見て羨ましい部分はすごくあって。彼女は踊りも演技も上手だし、スタイルもいい。振り付けも、パッとすぐ覚えちゃう。私は、休憩時間に振り付けの先生をつかまえて、やっと覚える。そんななかで『私にはなにができるんだろう』と考え、とにかく一生懸命やろうと。『ウンジャラゲ』(編注:『だいじょうぶだぁ』ファミリーが番組内で披露していた歌)の踊りも、恥ずかしがらずに楽しんで元気よくやりました!」

──確かに、その一生懸命さが松本さんならではのコメディエンヌぶりに繋がっていたような気がします。印象に残っているコントはありますか。

「う~ん、なんだろう。私が池のなかに落とされるシーンで、何度もテイクを重ねていくうちにヨロヨロになって、最後は池から上がれなくなっちゃうとか。私が入った棺桶に釘を打たれて閉じ込められたり、ヒモでくくられた本物のカエルが天井から落ちてきたり。今のバラエティーでは実現できなさそうなことも多かったですね」

──演技ではない新鮮なリアクションを、志村さんに引き出された形ですね。

「自分自身でも知らなかった部分を、志村さんがたくさん引き出してくれました。『だいじょうぶだぁ』に出演させてもらったおかげで、ほかの番組に出たときに自分ができることも増えたように思います。たくさんの方に顔と名前を覚えてもらうこともできましたし、あのときお誘いを断って歌手だけやっていたら、芸能活動自体も続いていなかったかもしれません」

──今後、またコント番組などバラエティー番組に取り組む予定は?

「もう、ちょっと厳しいかなぁ(笑)。なにより、志村さんだったからこそ、安心して全部あずけられたんだと思います。もちろん、多くのスタッフの方や、桑野(正義)さん、(石野)ようこちゃんといった共演者のみなさんとの信頼関係も大きいですよね」

──もしも、志村さんがご健在で「またコント番組やろう」と声がかかったら?

「今、志村さんから声をかけていただいたら、やるかもしれないですね。子どもが小さかった頃は、彼らの学校でのことも考えて、たぶんやっていなかった。今なら、子どもたちも『ふ~ん、やってみれば?』って言ってくれると思いますね」

──松本さんにとっても大きな存在だった志村さんが亡くなって、この春で丸4年になります。

「訃報を耳にしたときは現実のように思えず、追悼番組を見ても実感が湧きませんでした。信じられないという気持ちはずっと残ったままで、今でもまだ生きていらっしゃるんじゃないかと……」

──近年、志村さんとのご交流はあったんですか?

「最近はお会いできていませんでした。年賀状はこちらから一方的にお送りしていました。志村さんからは来なかったので(笑)、お会いした時に『届いていますか?』と聞いたら『自分は返事とか書かないんだ』と言われましたが、ちゃんと届いて見ていてくださったようです。結婚して家庭に入ってから、志村さんの舞台もほとんど観ていなかった。子育てがひと段落したこともあり、ちょうど亡くなった年のはじめに主人と『そろそろ志村さんの舞台も観に行きたいね』って話していたんです。それが叶わなかったのが、自分のなかでもすごく心残りです」

 第2回では、松本さんがアイドル時代に受けた熱狂的なファンからの洗礼、プロ野球選手だった夫との意外な結婚生活を明かした。

第2回に続く

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