新人ながら『ラッパと娘』を堂々と歌う歌手・水城アユミを、スズ子は舞台袖から静かに見守った。3月29日に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。その1週間前の22日には、年末恒例の「オールスター男女歌合戦」の様子が描かれたが、このアユミを巡り、ある議論が勃発している。
「『ブキウギ』は、戦後、ブギの女王といわれた笠置シヅ子さんをモデルに、登場人物名や団体名などを改称した、フィクション作品とされていました。でも蓋を開けてみれば、シヅ子さんが養女だったという設定や、御曹司の夫との出会いと死別など、想像以上に史実通りに描かれました」(テレビ局関係者)
スズ子以外のキャラクターにおいても同じだ。
「ブルースの女王、茨田りつ子(菊地凛子・43才)は淡谷のり子さん、作曲家の羽鳥善一(草なぎ剛・49才)は服部良一さん、棚橋健二(生瀬勝久・63才)は榎本健一さんなど、役名もキャラクターも実際のモデルが極めてわかりやすく、ほぼノンフィクションといっても過言ではありません」(前出・テレビ局関係者)
しかし、終盤にキーマンともいえる役柄で登場したアユミだけ、「この人だ!」と断定できるモデルが存在しないのである。『ブギウギ』には原案本がある。『ブギの女王・笠置シヅ子』(現代書館)という笠置さんの半生が描かれたノンフィクションだ。原案とは、あくまで“映像化のたたき台”だが、この原案本にはアユミのモデルと思しき女性が登場している。永遠の歌姫、美空ひばりさんだ。
「アユミがスズ子に歌合戦で持ち歌を歌わせてほしいと直談判した描写は、ひばりさんが笠置さんの持ち歌を歌いたいと直訴し断られたという実話を彷彿とさせます。劇中でスズ子は、アユミが持ち歌を歌うことを承諾するという、わずかな“改変”が見られましたが、ひばりさんが着ていたような真っ赤なドレスで熱唱するアユミの姿は、ひばりさんそのものだし、やはりアユミはひばりさんで決まりでしょう」(前出・テレビ局関係者)
一方で“ひばりではない説”も飛び交っている。アユミの「父はピアノ奏者、母は歌劇団のスター」という設定は、ほかの人物にもあてはまるのだ。前出の原案本の作者、砂古口早苗さんが語る。
「明らかに意識しているのは、両親の職業が一致していて、子役時代に笠置さんと共演経験がある江利チエミさんです。なかなか1人だと断言しにくく、当時の若手歌手の要素を複数盛り込んで作られたのが、アユミなのかもしれません」