左の佐藤龍月、右の石垣元気というふたりの2年生投手を擁し、地元の大応援団に背中を押された報徳学園を3対2で下した。前身の群馬女子短大付から共学化した2001年に同好会として発足し、青柳博文監督(51)は部活動に昇格した2002年に監督となったが、当時は髪の毛を伸ばしていた選手に「坊主にしたほうがいいんじゃないか」と提案したところ、15人のうち3人が辞め、練習をボイコットされた経験もある。
それから22年が経過し、青柳監督は箱山らの取り組みをどう見ているのだろうか。
「僕からしたら髪の毛は短くなくていいと思うんだけども、この子たちが泥臭くやると決めて、ひとつの方向を向いていくという意味では価値がある(行動だ)と思います」
記録員の川名健太郎は前日の準決勝後、全員が五厘以下の短さに揃えることについて「これが正しいかどうかは、日本一にならないとわからないこと」と話していた。
「やってきたことはやっぱ間違ってなかったと思います」(川名)
髪型を自由にして自主性を重んじたエンジョイ・ベースボールが天下を獲ったそのおよそ8カ月後、「昭和の野球」を志した令和の球児が、青光りした頭で日本一となった。どちらの取り組みが正しいかではなく、髪型で野球の勝負が決まるわけではない――その主張を慶應とは真逆の形で貫いた結果の、快挙だった。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)