警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、出所しても時間をおかずに新たに罪を犯し、人生の大半を刑務所で過ごす男について。
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「あいつほど幸せなヤツはいませんよ」と話すのは、人生の3分の2を刑務所で暮らしてきたという64歳の男の知人A氏だ。何が幸せなのかと聞けば、「だって考えてもみてください。普通の人だったら、刑務所は地獄かもしれない。だがヤツにとっては天国だそうだ。食べる物にも寝る所にも困らない。病気になっても治してくれる。何も考えなくてもいいし、何の心配もないわけです。税金も払わず、国が食べさせてくれているんですからね」
男がこれまでに有罪判決を受けた前科は13犯。これにより服役した期間は42年10か月。ところがA氏は「少年院の頃も含めれば45年近くになるだろう」という。少年院は少年刑務所と違って、刑罰ではなく保護処分として収容される施設。少年院に送致されても前科はつかない。64歳という年齢を考えると、外の世界にいたのは20年ほどしかない。
そしてこの3月、これに懲役3年6月の実刑判決が加わった。実はこの男、2023年4月に出所していたのだが、半年が過ぎた11月、街を歩いていたところを警察官の職務質問を受け逮捕された。罪状は覚せい剤取締法違反。提出した尿から覚せい剤の陽性反応が出たのだ。
前科13犯のうち10犯は薬物によるもので、覚せい剤を始めたのは18歳頃、男は覚せい剤の常習者だった。もとは暴力団にも所属したことがあるというが、それも遠い昔。「ヤクザに戻ることはなかったが、昔からの知り合いはいた」という男は、薬物売買を通じ暴力団との関係は完全には切れなかったようだ。これだけ薬物事件の犯歴を重ねていれば健康を害し身体はボロボロだろうと想像するが、「俺なんかよりあいつの方が健康ですよ」とA氏は話す。
「薬物でおかしくなってくると逮捕される、ということを繰り返してきた。違法薬物の売人をやっていても、自分で使わなければ挙動不審にもならない。精神状態がおかしくなることもない。警察官に目をつけられ職質をかけられることもない。ところが売人をやっていると、”商品”の質をみるために試すうちに、自分でもやりたくなってくる。売人が自分で使っちゃおしまいですよ。へべれけになってしまえば、警察に捕まるだけです」(A氏)。そうして男は何度となく逮捕され、その度に数年の実刑判決を受け服役する。服役中に薬物は抜け、すっかり健康になって出所するという。