「子どもに幸せになってほしい」──多くの親が抱く感情でしょう。同時に人それぞれ永遠に答えの出ない問いでもあります。それを科学のアプローチから探ったのが、東京大学客員研究員で医師の柳澤綾子さん。
柳澤さんは15年以上臨床現場の最前線に立ちながら、大学等でも研究し、海外医学専門誌(査読付)に論文を投稿。年間500本以上の医学論文を読破する“論文オタク”です。自らも二児の母である柳澤さんが、あらゆるジャンルの科学論文を読み漁った結果、子どもが「自分は幸せだと思えるためにできること」には答えがあるという結論に辿り着きました。
その一つが子どもが自分で人生を選択できるようになること。子どもが自発的に決められるようになると親自身が楽になるだけでなく、子どもの人生が開け、本人の幸福感も高まります。
自分で決められる子になるためには、いくつかの要素が必要になりますが、成功した人に共通するのが「諦めない心」というスキル。柳澤さんがエビデンスに基づいて厳選した世界の最新研究の中から、現時点で最も確かな親の関わり方を1冊にまとめた『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版)より、一部抜粋、再構成してお届けします。 【全3回の第1回】
諦めない心は今日から鍛えることができる!
適切なコミュニケーションを取って、正しく考え、高い自己肯定感があっても、自分が決めた選択が間違いだったり、選択に迷ったりすることもあります。そこで、自分で決められる子になるためには、「諦めない心」が欠かせません。
「諦めない心」に関連して、近年注目されている「GRIT(グリット)」という言葉を聞いたことはないでしょうか? GRITとは、「やり抜く力」または「粘る力」と定義されています。社会的に成功している人たちは、困難な状況に遭ってもくじけない強い心を持っているのです。
GRITを提唱した心理学者でペンシルバニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワース博士は、GRITについて「才能やIQ(知能指数)や学歴ではなく、個人のやり抜く力こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素である」と述べています。しかも、「GRITは先天的なものではなく、後天的に育てられる能力である」とも述べているのです。
また、スタンフォード大学の社会心理学者キャロル・S・ドゥエック教授の研究によると、「生まれながらおそらく元々持っていたであろう知能の方を褒められて育った子どもは、自分の能力や才能は、元々持っていた先天的能力で、自分の努力によって伸ばせるものではないと考えるようになる」そうです。