裏金事件がこれだけ問題になったのに大した処分もなく、「次の選挙でも結局、政治は変わらないのでは」と諦めを抱く人もいるかもしれない。決してそんなことはない。有権者の間で「落選運動」が大きなうねりとなれば、選挙結果は変わる。
政党や候補者への投票を呼びかける「選挙運動」は公選法で選挙期間(公示日から投開票日前日まで)しか行なってはならないと定められ、多くの規制がある。それに対して、特定の候補者を「当選させてはならない」と訴える「落選運動」は通常の政治活動とされ、個人で行なうのであればいつからでも始められる。
嘘や誹謗中傷はNGだが、事実に基づいた評価や批判は自由にできる。
選挙運動はポスターの掲示やビラの配布に規制があるが、落選運動にはそうした制限はない。
2021年の前回総選挙の際には、元東京地検特捜部検事の郷原信郎・弁護士が複数の政治家を対象に「◯◯氏を当選させてはならない」というノボリを立てて街頭演説を行なったり、なぜその政治家に投票してはならないかの理由を書いたチラシを配布したり、SNSで呼びかけて候補者の票を大きく減らし、小選挙区で落選した者もいた。
「落選させたい政治家はいるが、自分の住んでいる選挙区ではない」という場合は、ボート・スワッピング(投票交換)という方法がある。
たとえば東京都民で「岸田首相を落選させたい」と考える人なら、ネットで広島1区の有権者に呼びかけ、岸田首相が落選するような投票行動をしてもらう代わりに、自分は相手が落選させたいと思う候補者に同様の行動を取る。1対1で交換相手を探すのは大変だが、SNSや掲示板に「#投票交換所」といった投稿をし、広く募って複数で互いの落選運動相手を交換することも可能だ。
注意が必要なのは、個人ではなく、団体や組織で落選運動を行なう場合だ。選挙期間中に政治活動を行なえるのは政党と確認団体に限られる。そのため団体による落選運動は公示日以降はできない。また、公選法改正で2013年にネット選挙が解禁されたのに合わせ、メールやウェブサイトを利用して落選運動をする者は、メールアドレスや氏名などを表示しなければならないと定められた。
表現にも気をつけたい。「◯◯候補を落選させよう」はいいが、「◯◯候補を落選させるために××候補に投票しよう」と呼びかけるのは選挙運動にあたるためNGである。
正しいやり方で落選運動を展開すれば、裏金議員を総選挙で全員退場させることも夢ではない。
※週刊ポスト2024年5月3・10日号