「テレビで紹介されて話題だから」「昔、実践して成功したから」「友達が5kgやせたんだって」──。そんな理由でよく調べもせず、安易に「健康法」をやっていないだろうか。その健康情報、実は時代遅れで逆効果になることもある、いますぐ見直しを。
「個人の感想であり、効果を保証するものではありません」
1970年代初頭から、この言葉を携えて、「紅茶きのこ健康法」「脱パンツ健康法」「りんごダイエット」といったさまざまな健康情報が世に出ては消えていった。
ブームとなった後、だんだんと下火になった背景には単純に「飽きられた」ということもあるが、後に健康にとって逆効果であることが判明したケースがある。
『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』の著者で、東京大学で公衆衛生を研究している医学博士の柳澤綾子さんが説明する。
「1万人の結果では“よい”とされたものが、長期的に10万人を対象にして研究をしたら“よくない”となることは、実は少なくありません。そのため、後からどんどんと“正解”が塗り替えられるのが科学と医学の世界の現状です」
代表的な例として「子供の食物アレルギー」がある。2000年頃、アメリカ小児科学会は「妊娠中、授乳期の女性は、ナッツや卵などのアレルギーになりやすい物質は避け、離乳食で与えるのも遅らせた方がいい」と声明を出していた。
そのため、日本でも多くの妊婦がアレルギーの可能性がある食べ物を避けたが、ナッツアレルギーの子供は一向に減らなかった。
そして2003年、世界的に権威のある医学誌『NEJM』に、「ピーナッツオイルを含む保湿剤を肌に塗っていた乳幼児はナッツアレルギーになる確率が高い。母親の食事内容では差がない」という論文が掲載された。
「この発表を機に“アレルギーは食べ物より、皮膚の傷口から体内にアレルゲンが侵入した際に発症している”という考え方が主流になりました」(柳澤さん)
このように、医学的な正しさは研究の積み重ねで更新され、一時はもてはやされた健康法が体を壊しているケースが多々ある。精神科医の和田秀樹さんは、やせ願望が強い日本人の考え方にくぎを刺す。
「昔は肥満だと短命になると思われていましたが、疫学調査ではBMI25以上の人の方が長生きだとわかっています。そもそも無理なダイエットは寿命を縮めかねません」(和田さん)
そうした注意すべき「逆に死を招く嘘だらけの健康法」を専門家に取材し、ランキングにした。
[以下10名の「健康の専門家」に「健康を損なうリスクが大きい健康法」を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。5点以上を獲得した回答を掲載した。秋津壽男さん(内科医/秋津医院院長)、石原新菜さん(内科医/イシハラクリニック副院長)、大西睦子さん(内科医)、岡田正彦さん(医学博士/新潟大学名誉教授)、佐々木欧さん(日本アレルギー学会専門医)、田中優子さん(田中病院院長)、浜本千恵さん(管理栄養士)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会)、柳澤綾子さん(医学博士/東京大学医学部客員研究員)、和田秀樹さん(精神科医/和田秀樹こころと体のクリニック院長)]