また、「故人AI」への依存が、肉親を失って悲しみに暮れる人の社会復帰を妨げるという意見もある。
「アメリカでは心理学者などから、人間にとって必要とされる『忘れる』という行為に抗う危険性が指摘されています。
また、人工的に作られた『人格』との対話が、精神に与える影響も未知数です。以前、Googleで『ラムダ』というAIを開発していた研究者が精神を病み、Googleを告発するという事件も起きました。この研究者はAIにデータを学習させるため、ラムダと一日中会話をするのが仕事だったのですが、『ラムダは感情を持っている』などとおかしなことを言い出すようになってしまったのです」(前出・ITジャーナリスト)
一方、ビジネスを展開する側は、家族の同意など倫理面をクリアすれば、遺族たちにとって“福音”となると主張している。
数年前、弟を自死というかたちで失ったある遺族男性に、「故人AI」をどう思うか聞いた。彼の弟はまだ20代半ばだった。
「私は心の整理がつくまで2年くらい要しましたが、母はいまも『離れたくない』と納骨できずにいます。母は『科学が進歩したら、遺骨から生命を復活できるかもしれない』とも話していました。母のような人にとっては、生きる活力を見出すサービスになるような気がします。実際、私の妻が、遺影がまばたきをしたり、微笑んだりする『動く遺影アプリ』を教えてあげただけでも、母は喜んでいましたから」
ただ、彼は自分では利用しないだろうと話す。 「リアルに見せかけた、作り物だとわかっているからでしょうね……」。
今後、日本にも上陸することが予想される「故人AI」サービス。
あなたは誰に会いたいか、そして、どう使うのか。いまのうちから考えておいてもいいのかもしれない。
※女性セブン2024年5月9・16日号