自民党の支持率が低迷するなか、岸田文雄・首相が目論んでいたとされる「6月解散」に黄信号が灯ったように見える。ところが、崖っぷちのはずの岸田首相は“伝家の宝刀”を抜くため、密かに準備を進めていた。その証拠となる内部報告書を入手した。【前後編の後編。前編から読む】
岸田首相には、自民党の組織票を動かす「奥の手」がある。それを発動していた。本誌・週刊ポストはそれを示す自民党の内部資料を入手した。
自民党組織運動本部団体総局が3月に作成した〈令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】〉と題するA4判31ページの文書だ。文書は自民党の「票とカネ」を根幹で支える業界へのバラ撒きを示すものだ。
内容を個別に見ていくと、日本医師会などは診療報酬引き上げ、建設コンサルタンツ協会は公共事業費の確保など、各団体が予算や補助金の増額、業界への税制優遇を求める要求のオンパレードで、ほぼ“満額回答”だ(リスト参照)。そして、これらの団体は選挙において“組織票”となるというわけだ。
解散前の人事で勝負
これらの団体はどれだけの集票力を持つのか。
有力な団体は、自民党の参院の比例代表に「組織内候補」を擁立し、議員を送り込む。組織内候補の得票数(2022年参院選)を見ると、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護連盟など医療系団体は約69万票、全国郵便局長会は約41万票、農政連など農協系は約18万票と巨大だ。
自民党が何度も政治とカネの不祥事を起こし、国民の怒りを買っても政権を維持できるのは、補助金(カネ)と票のギブ・アンド・テイクで結びついたこれらの団体の「組織票」があるからだ。
岸田首相は業界団体へのバラ撒きを進めることで、「組織票」を頼みに解散・総選挙に踏み込もうとしている。