休戦案をめぐり、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で交渉が続くなか、双方で動きがあった。泥沼化する戦況に変化が起きるのか。元TBSアナウンサーで元駐イスラエル日本大使を夫に持つ、ジャーナリストの松富かおり氏が最新の中東情勢をリポートする。
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パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは5月6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると発表した。一時的に休戦への期待も高まったが、内容をよく見ると、ハマスが「受け入れる」とした案は、42日間の休戦を実施し、最終的にイスラエルによるガザ封鎖の解除を求めるというものだ。『恒久的な停戦』のほか、『イスラエル軍のガザからの完全撤退』も含む。これではイスラエルは受け入れられず、ハマスの世界に向けてのパフォーマンスと言われても仕方がない。
イスラエルは一時、「40日間の休戦と引き換えに人質33人を解放する案」で休戦に応じようとしていた。しかし、ハマスが応じると発表した「休戦案」は、これとは距離がありすぎた。さらに人質解放に向けても、全体的な展望は示されていない。
ハマス側は様々な過激派分子が100人を超える人質を拉致しているうえ、最高指導者ハニヤ氏は全ての過激派分子を統率できていない。イスラエルからすれば、仮に休戦案が合意に至っても、人質が全て解放される保証はないのだ。
イスラエルは、今回のハマスの「休戦案受け入れ表明」自体を「世界にイスラエルが悪者である」という印象を広げるプロパガンダのひとつであり、「『時間稼ぎ』にすぎない」と見ている。