一所懸命やってやっと現状維持
元東大野球部で元政治部記者。そこから伝える側に回り、現職にあるのも、「全ては偶然」と笑う。
「成績的には到底無理だった東大に勝負根性だけで合格したり、野球も早慶みたいに強くないからこそ試合に早く出られて力がついたり、本当に意図せずここまで来たんです。
これは以前お話を訊いた真田広之さんの言葉ですが、海外でなおも挑戦を続ける彼に目指すゴールを訊いたら、『いや、行き着いた先がゴールですよ』って。この言葉を僕は勝手に気に入り、勝手に使ってるんですけど、確かにその時々の縁や偶然を大事にして生きていけば、それで十分なんですよね。
若い人に言えるとすれば、還暦すぎても迷いの連続ですよってことくらい。僕はその見本になればと思って番組にも出てますから(笑)。目標も特にないし、身近な家族や猫の目に今の自分がどう映るかを参考にしつつ、一歩でも進めばラッキーなのかなあと。放送も文章も毎日一所懸命やって、やっと現状維持だと思うので」
スポーツも戦争も多くは人間のやることだ。その輝きや惨さに日々身を晒し、動揺もあえて見せる著者は、〈あの世代の怠慢がすべての原因だ〉と後々恨まれることがないようにと自戒を綴る。だから迷いはしても黙りはしない、途上の人だ。
【プロフィール】
大越健介(おおこし・けんすけ)/1961年新潟県生まれ。東京大学文学部国文学科卒。在学中は野球部に所属。投手として東京六大学リーグ通算8勝27敗の成績を残し、日米大学野球の代表メンバーに東大から初選出されるなど活躍する。卒業後はNHKに入局し、政治部記者やワシントン支局長等を経て、『ニュースウオッチ9』『サンデースポーツ2020』等のキャスターを歴任。2021年6月に同局を退職し、同10月よりテレビ朝日系『報道ステーション』のメインキャスターを務める。169cm、78kg、A型。
構成/橋本紀子
※週刊ポスト2024年5月17・24日号