田淵:岡田監督が選手たちの出塁率への意識を高めて、去年のフォアボールは494で6球団でトップだった。そうやって打線を繋げた。去年から阪神の野球は変わったよ。
掛布:お二人の時代からどう変わった感じですか?
江夏:俺たちの時代は、まだまだ個が強くて、戦術・戦略は巨人の十八番だった。だから「V9」が成し遂げられた。
田淵:ONがいたからできたっていうのもある。
掛布:すごく気になっていたんですが、黄金バッテリーのお二人はONに対してどういう攻め方をされたんですか? ほぼまっすぐですか?
江夏:「まっすぐですか」ってカケ、俺はまっすぐしか放れないから。
掛布:すいません(笑)。王さんへの最後の決め球は外ですか内ですか?
江夏:内やろうね。
田淵:王さんが上げた右ひざを狙っていた。
掛布:よく一本足打法の王さんの右足はインコースのストライクゾーンを隠すっていうんですけど、ピッチャーからすると隠れるんですか?
江夏:隠されるんじゃなくて、俺は目印にしてた。
掛布:なるほど、ひざ小僧めがけて投げる。じゃあ、長嶋さんへの攻めは王さんとは違う戦法をとったんですか?
江夏:長嶋さんと王さんへの攻め方はまったく違う。長嶋さんはどこでも打ってくるから。
掛布:決め打ちする王さんと、どこでも手を出す長嶋さん、どちらが苦手でした?
江夏:王さんに打たれりゃ納得するけど、長嶋さんに打たれても、何なんだろう……って感覚よ。