「降圧剤」を服用する人は、全国民の2割に上る。高血圧による動脈硬化や心疾患を避けるため──医者はそう説明するが、薬が重病の発症を招いてしまっては本末転倒だ。
降圧剤のリスクは思わぬところに潜む。歳を重ねて持病が増え、複数の科を受診すると、知らないうちに「危ない薬の飲み合わせ」をやっていることがあるからだ。
こうした飲み合わせをめぐる認識でも、日本は世界の医療に比べて後れを取っている。薬剤師の長澤育弘氏は氏が言う。
「欧米では薬と薬だけでなく、薬とサプリ・健康食品の飲み合わせについても注意が払われていますが、日本では注意喚起に必要な情報自体が不足しています。しかし、それらの『飲み合わせ』を意識することは非常に重要です」
本誌・週刊ポストは長澤氏監修のもと、降圧剤との危険な飲み合わせについてリストにまとめた。
高血圧治療では、複数の降圧剤が併用されるケースが多いが、Ca拮抗薬はそもそも血圧降下作用が強いため、ほかの降圧剤との組み合わせで血圧が「下がりすぎる」リスクがある。また、長澤氏はARBとACE阻害薬の併用に注意を促す。
「効きすぎて低血圧を起こす恐れがあるほか、腎機能障害や高カリウム血症を引き起こすこともあります。腎機能が低下しやすい高齢者は特に注意が必要です」
降圧剤と並んで服用者が多い糖尿病治療薬との飲み合わせにも注意したい。医薬品などの安全性を司るPMDA(医薬品医療機器総合機構)で審査専門員を務めた内科医の谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎院長)が解説する。
「ループ利尿薬は糖尿病治療薬との飲み合わせで副作用の発症リスクが高くなるものがあります。SGLT2阻害薬との飲み合わせでは利尿作用が増強されて低血圧や脱水症になる恐れがあります」