ところが黒木という役は爽やかなイケメンとは真逆。何を考えているのか掴みどころがなく、自分勝手で態度がでかくて横柄。爽やかだった笑顔は含み笑いに変わり、どこか胡散臭く嘘くさく見える。直球のように感情を乗せてしゃべっていたセリフは、煽るようなあざけるような、人を小バカにしたような冷たい声音に変わった。こんなセリフ回しが出来たのかと思うほど、独特の間合いとアップダウンの激しいトーンのセリフをなんなくこなしていく。だが次の瞬間には真面目な口調に変わり、落ち着いた優しそうな表情を見せたりもする。その緩急織り交ぜたギャップのある演技が新鮮で、これまでの彼の演技とのギャップも相まって魅了されていくのだろう。
ところである心理学の実験結果に、人はダークで攻撃的な人間に惹かれる傾向があるというものがある。人気が出るのはステレオタイプのヒーローとは限らない。そして人に対して親切な言動を取れる人にも惹かれるという。つまり人はダークな一面を持ちながら、実は親切という人に魅力を感じるようなのだ。これってまるで今の役を演じている竹内さん?のことみたいだ。
ブラックコメディーさながらの得体の知れない不気味な役は、今まであまり彼に感じなかった人間臭さや泥臭さを感じさせ、その存在感を強くする。ネット上では「新境地を開いた」「新しい竹内涼真の誕生」という声があがるほどで、回を重ねダークな演技を見れば見るほど、もっと彼を見たくなる、好感度が高まっていく。見れば見るほど知れば知るほど印象が良くなり、好感度が増していくという「熟知性の原則」竹内涼真版が、ドラマを通じて起きている。
ドラマは中盤に差し掛かったばかり、彼が見せる新しい顔にはまる人がこれからも続出しそうだ。