西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの酒造地からなる兵庫県「灘五郷」。世界的に日本酒の人気が高まる中、最高峰と誉れ高い「灘の生一本」を生み出した名水「宮水」の流れる“日本酒の聖地”へ、円安を追い風に外国人観光客が押し寄せている。
「SAKEは自国では2~3倍するから、日本で買えるのが楽しみだった」
外国人観光客はそう声を揃え、次々に日本酒を購入していく。お土産用、今夜ホテルで飲む用と旺盛な購買意欲をみせる。試飲しては「これが本場の仕込み水で引き出された米の旨みか……」と浸る観光客も。蔵元の1つ、白鶴酒造の資料館では担当者がこう語る。
「欧米諸国、ベトナム、中国、シンガポール、台湾など多くの国から観光客がいらっしゃいます。昨年度の来館者数は国内外合わせ約12万人でしたが、今年度、今のところは比較的外国人観光客の方が多いと感じます」
インバウンド向けガイドツアー「Kampai Sake Tours」でガイドを務める西川成悟さんが近況を語る。
「灘の酒蔵を巡るコースでは欧米、アジア問わず富裕層が多く、職種では弁護士、会計士、医師などが多いですね。コロナ禍では0人の時もありましたが、昨年から回復し、今年1月以降は月に150人を超える申し込みがあることも。皆さん、自国で買うより日本酒が安い!と喜んでいます」
蔵元を巡る同ツアーに参加したアメリカ人男性(26)は「憧れだった灘の日本酒は美味しくて種類も豊富。灘五郷はまさに“SAKEの首都”だよ!」と破顔した。