岸田文雄・首相(時事通信フォト)

岸田文雄・首相(時事通信フォト)

“命綱”の選挙協力も解消へ

 東京の自公関係はもっと悪い。

 自公は東京での選挙区調整に失敗し、公明党の石井幹事長が「東京においては、信頼関係は地に落ちた」といったんは選挙協力を解消。その後、復活を大筋合意したが、現場の動きは違う。

 東京での選挙の第一線を担ってきた公明党関係者は、岸田首相の「解散やるやる詐欺」に翻弄されてきたと怒っている。

「裏金問題はみんな怒っているが、岸田さんは昨年以来、解散総選挙を匂わせながらやらなかった。公明党、創価学会は昨年からずっと選挙準備をして組織が疲弊している。

 次の総選挙は昨年11月15日に亡くなった池田大作先生(創価学会名誉会長)の弔い合戦と見られるでしょう。だから極力いい結果を出したいが、自民党が支持層から見放されているのに、われわれが『小選挙区は自民党、比例は公明』と呼びかけても、逆に公明票を減らしてしまうだけです」

 自民党は完全に“三行半”を突きつけられようとしている。

 自公を結びつけてきた“命綱”ともいえる選挙協力がこの状態では、もはや連立は風前の灯火だ。

 選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏は、次の総選挙からの展開についてこう話す。

「公明党は次の総選挙で小選挙区に候補者を擁立するから、選挙が終わるまでは自民党との選挙協力を解消できない。小選挙区で当選させるためには自民党の票がいるからです。しかし、総選挙になれば自民党が大敗するだけではなく、公明党も小選挙区での全敗に近い結果が予想される」

 2009年の総選挙で自民党が政権を失った際は、公明党はともに下野して選挙協力を続けたが、いまや当時のような強固な関係ではなくなっている以上、「自公は正式な連立解消に向かう」と野上氏は見ている。

「公明党・創価学会では、小選挙区への候補を擁立せずに、昔のように比例代表だけに候補を立てる比例政党に回帰すべきという声が高まるはずです。公明党が比例に専念すれば、自民党との選挙協力は必要なくなる。そうなると連立離脱の条件は整う。連立から25年目の“熟年離婚”に向かうことになるでしょう。自民党も、公明票がなくなれば政権維持は難しい」

 岸田首相が解散・総選挙に踏み切る時が、自公が正式に“離婚協議”に向かう転換点になる。

※週刊ポスト2024年6月7・14日号

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