今シーズンは大混戦となっているセ・リーグ。球団創設90周年という節目を迎えた巨人は、今季から阿部慎之助・新監督(45)が指揮を執り、屈辱の2年連続Bクラスからの復活を期す。辛口で知られる評論家は、そんな今季の巨人をどう見ているのか。
著書に『監督 原辰徳研究』がある辛口評論家・江本孟紀氏(76)は、「阿部の野球を見ていると、若い選手を積極的に使って、自分の時代の中心選手を探そうとしていますよね。ピッチャーで言えば山崎伊織(25)、西舘勇陽(22)、堀田賢慎(23)とかがそうですね」と話す。
「原(辰徳・前監督)は温情が過ぎるところがあって、実績のあるベテランをいつまで使い続けるんだというのがあった。しかも、ベテランの力が大きく落ちて働かなくなっていた。阿部はそこを割り切ってうまく修正してやっている。巨人にはいい選手がたくさんいるわけで、見極めて使えば戦力になりますよ」(江本氏)
阿部監督も原前監督も現役時代は巨人のスター選手だったが、江本氏は「監督としては、阿部には派手さがない。それがいい」と表現する。
「原は監督としても華があったが、そのマイナス面が強くなっていた。阿部がいいのはベンチで勝っても負けても大騒ぎしないこと。大将がはしゃいではいけません。今年、巨人が優勝でもすれば、MVPは(3年契約だったのを)1年早く辞めた原だと思いますね。ズルズル続けていたら、チームとして切り替えができなかったでしょうから」
果たして今季の優勝に手は届くのか。現役時代に巨人の名ショートとして活躍し、監督としてはヤクルト、西武で3度の日本一を経験した御意見番、広岡達朗氏(92)は、「まだ勉強中なのに、まぐれで1位になったりすると勘違いしてしまう」という言い方をした。
「阿部は原の下で(ヘッドコーチとして)勉強なんてしとらんのです。黙っていたからクビにならなかった。だから時間がかかるけど、阿部はこれから勉強すればいい。これで勝ってしまうほうが怖くて、むしろ膿を出す絶好のチャンスでしょう。
ピッチャーが点を取られなければ負けないのが野球。だからピッチャーに力を入れて育て、育った時に長く勝ち続けられる。そういう信念を持ってやらないといけない」
それが、栄光を取り戻すためのいちばんの近道になるのかもしれない。
※週刊ポスト2024年6月7・14日号