封筒に入っていた「遺品」
そして昨年10月末、イスラエル政府がシャニさんの死亡を確認。DNA鑑定により、発見された頭がい骨の一部が彼女のものであることが判明した。それから約7か月を経て、シャニさんの遺族は、遺体が帰ってきたことに深い安堵を示している。
「まさか遺体が無事に戻ってくるとは思っていなかったようです。トンネルの涼しいところに安置されていたのか、遺体の状態は良好とのことで、母親のリカルダさんは、『彼女の肉体は家に帰り、安らかに休むことができる』と海外メディアにコメントしていました。
父親のニッシムさんによると、警察から受け取ったA4サイズの白い封筒の中には書類と遺品が入っていたそうです。遺品は黒ずんだネックレスや、金のイヤリング、そして鼻ピアスや唇のスタッドなどだったとか」
シャニさんの遺族は、彼女が性的暴力を受けた末に、撃たれて即死したと考えており、状態のよい遺体や遺品が発する“無言のメッセージ”に、一抹の救いを見出しているようだ。ニッシムさんは、「それほど苦しまずに死んだことがわかってよかった」とインタビューで口にしていた。遺族がこのように語る背景には、生き地獄とでも呼ぶべき現地の悲惨な状況がある。
「イスラエル当局は、ハマスの性暴力をめぐる資料をジャーナリスト向けに公開しています。音楽フェスの生存者による目撃証言もありました。生存者は、『複数のハマスの戦闘員に女性が襲われていた。女性の胸を切断し、おもちゃのように扱っていた。少女を肩に担いだ戦闘員もいた』などと語っていました。
ただ、それぞれの思惑のもと、イスラエルとハマスの双方が意図的なメディア露出をしている可能性があるため、現地をめぐる情報は慎重に検討する必要があります」
民間人を巻き込んだ報復攻撃をめぐって、イスラエルにも国際的な批判が集まっている。
「本来なら国際人道法で保護されているはずの病院に対しても、イスラエル軍は『ハマスが病院を乗っ取っている』と主張して攻撃を仕掛けています。ガザの保健省は5月12日、イスラエル軍の攻撃による死者が3万5000人を超えたと発表しました」
イスラエルの政府高官は5月29日、ガザ地区での戦闘は少なくとも年内は続くとの見通しを示した。無数の犠牲を積み重ね、この“生き地獄”が終わる日は来るのか──。