司組長の姿を目に焼き付ける組員
機関紙『山口組新報』には“編集部”によるレポートと、4枚の写真が掲載されている。ナンバー4である〈森尾卯太男本部長の号令により一斉に各ブロックが「よいしょ」と大きな掛け声の中、餅搗きを始めます〉〈来場組員の数も150人近くなり熱気と活気に溢れた会場〉だったという。(〈〉内は山口組新報より)
司組長が到着したときには空気が一変。〈本家の親分(編集部注:司組長とみられる)が御見に成られた時は一瞬静まり返り、会場に入られると皆が「ごくろうさまです」と練習したかの様に声を合わせて挨拶しました〉と記されている。
その後、司組長と森尾本部長、津田力若頭補佐により鏡開きが行なわれる。写真をみると、樽酒は開催地である愛知県の蔵元のものだとわかった。
「司組長、高山若頭の出身母体である弘道会は愛知県が本拠地で、この蔵元のお酒は名古屋では知る人ぞ知る銘酒。司組長も知っていた可能性は高く、親分を喜ばせるために必死に入手したのだろう。この写真一枚だけでも、餅つきへのこだわりが窺える」(実話誌記者)
暴力団は盃で擬似的な親子関係を結ぶため、六代目山口組にとって司組長は頂点に立つ存在だ。それゆえ、組員は司組長がついた餅を〈すぐに雑煮や善哉に変わり、皆が並んで我先に口へと運びます〉と、ありがたがり、〈普段では拝する事などない本家親分の御姿を会場に来た組員の方は目に焼き付けるように見ていました〉と礼賛する記載もある。
「実際、六代目山口組は傘下組織も多く、弘道会系や直系組織以外となると司組長を見る機会は限られている。『山口組新報』や実話誌でしか司組長の姿を見たことがない組員も多いため、こうした記事や写真は組員の意識高揚の狙いもある」(同前)
その後、14時半まで餅つきは続き、森尾本部長の手締めで終了したという。編集部は〈課題を残しつつも良い六代目山口組の催しであったと思います。来年こそは是非総本部で開催したいものです〉と締めくくっている。
しかし、山口組の置かれた現状は非常に厳しいものになっている。
「警察はこの日もシャッターの隙間からカメラを回して証拠を収めようとするなど、餅つきを暴力団壊滅の糸口として考えている。実際、この前年(2022年)の餅つきでも、プロパンガスの運搬方法が国の安全基準に違反していたとして直参組長を逮捕しています。
総本部の使用禁止も解かれることはないでしょう。六代目山口組としては、こうした規制の解除は悲願でしょうが、市民を危険に晒している分裂抗争を終結させるのが最低条件だといわれている。分裂抗争は10年目に突入しても終結の兆しは窺えず、長期化する抗争、規制で徐々に六代目山口組の体力が奪われていっている」(同前)