調教師として多くの馬たちに接する蛯名氏
モンレーヴの上がり3ハロン(600m)は32秒2。上がりタイムが速いのは「決め手」があるという意味で「武器」にはなるし、長所ととらえていいとは思いますが、いつも後方から行くわけではありません。馬場が悪いとその「武器」は使えないし、直線に坂があるか平坦なのかでも違ってきます。コンスタントにスピードを出せる方がいいケースもあります。
前走の中山記念の時、レースから戻ってきたモンレーヴは思うようなレースができなかったことに怒って厩務員さんに噛みつこうとさえしましたが、今回はケロッとしていました。本人は勝ったと思っていたようです。クールに「ね、本気出したら前に出たでしょ」って。
安田記念ではGIを7勝している香港馬ロマンチックウォリアーをはじめ強い馬が揃います。とはいえ、調教師が入れ込んでも仕方がないので、いつも通りの準備と平常心で臨みます。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。この連載をベースにした小学館新書『調教師になったトップ・ジョッキー~2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』が発売中。
※週刊ポスト2024年6月7・14日号